IPDメタアナリシス:多剤耐性結核で副作用の多い薬剤は?
2020年 05月 13日
リネゾリドとサイクロセリンが多い印象です。リネゾリドは、WHOの多剤耐性結核ガイドラインではレボフロキサシン、ベダキリンとならんで強く推奨されている薬剤です。また、日本では保険診療の問題があります。
Lan Z, et al.
Drug-associated adverse events in the treatment of multidrug-resistant tuberculosis: an individual patient data meta-analysis.
Lancet Respir Med. 2020 Mar 16. pii: S2213-2600(20)30047-3. doi: 10.1016/S2213-2600(20)30047-3.
背景:
多剤耐性結核(MDRTB)の治療は複数のセカンドライン薬剤を長期間を投与する必要がある。これらの薬剤は多くの副作用イベントがあり、聴覚障害などが重篤になりうるだけでなく、致死的な症例も存在する。この研究の目的は、異なる抗結核薬治療と副作用イベントの頻度の絶対的頻度・相対的頻度を類推することである。
方法:
われわれは、抗結核薬の永続的な中止につながる有害事象を報告した研究から得られたデータによるIPDメタアナリシスをおこなった。MDRTBの治療と転帰に関するメタアナリシス用データベースを使用し、2009年1月1日から2015年8月31日(2016年4月15日更新)までに公開された文献のシステマティックレビューを実施した。著者に個々の患者レベルの情報を依頼した。また、2018年にWHOが行った公募に応じて患者レベルデータを提供した分析研究についても検討した。
結果:
58研究が同定され、MDRTBの治療に対する50研究のIPDメタアナリシスがおこなわれた。このうち35研究9178人がわれわれの解析の組み込まれた。永続的中止にいたる副作用イベントの頻度が低い薬剤は、レボフロキサシン(1.3% [95%信頼区間0.3-5.0]), モキシフロキサシン(2.9% [1.6-5.0]), ベダキリン(1.7% [0.7-4.2]), クロファジミン(1.6% [0.5-5.3])だった。相対的に永続的中止にいたる副作用イベントの頻度が高かったのは、セカンドラインの注射薬(アミカシン: 10.2% [6.3-16.0]; カナマイシン7.5% [4.6-11.9]; カプレオマイシン8.2% [6.3-10.7]), アミノサリチル酸(11.6% [7.1-18.3]), リネゾリド(14.1% [9.9-19.6])だった。解析に含まれた研究と除外される研究の間に重要な違いがなかったため、研究選択におけるバイアスリスクは低いと判断された。ただし、分析されたほとんどの結果について、研究間のばらつきは顕著だった。
結論:
フルオロキノロン、クロファジミン、ベダキリンは永続的中止にいたる副作用イベントの頻度が低く、セカンドラインの注射薬、アミノサリチル酸、リネゾリドは頻度が高かった。これらの結果は、MDRTB治療を受けている患者にとって副作用の綿密なモニタリングが重要であることを示唆している。この結果はまた、MDRTBの治療による不利益を減らすため、より安全かつ忍容性の高い薬物が望まれているともいえる。
Lan Z, et al.
Drug-associated adverse events in the treatment of multidrug-resistant tuberculosis: an individual patient data meta-analysis.
Lancet Respir Med. 2020 Mar 16. pii: S2213-2600(20)30047-3. doi: 10.1016/S2213-2600(20)30047-3.
背景:
多剤耐性結核(MDRTB)の治療は複数のセカンドライン薬剤を長期間を投与する必要がある。これらの薬剤は多くの副作用イベントがあり、聴覚障害などが重篤になりうるだけでなく、致死的な症例も存在する。この研究の目的は、異なる抗結核薬治療と副作用イベントの頻度の絶対的頻度・相対的頻度を類推することである。
方法:
われわれは、抗結核薬の永続的な中止につながる有害事象を報告した研究から得られたデータによるIPDメタアナリシスをおこなった。MDRTBの治療と転帰に関するメタアナリシス用データベースを使用し、2009年1月1日から2015年8月31日(2016年4月15日更新)までに公開された文献のシステマティックレビューを実施した。著者に個々の患者レベルの情報を依頼した。また、2018年にWHOが行った公募に応じて患者レベルデータを提供した分析研究についても検討した。
結果:
58研究が同定され、MDRTBの治療に対する50研究のIPDメタアナリシスがおこなわれた。このうち35研究9178人がわれわれの解析の組み込まれた。永続的中止にいたる副作用イベントの頻度が低い薬剤は、レボフロキサシン(1.3% [95%信頼区間0.3-5.0]), モキシフロキサシン(2.9% [1.6-5.0]), ベダキリン(1.7% [0.7-4.2]), クロファジミン(1.6% [0.5-5.3])だった。相対的に永続的中止にいたる副作用イベントの頻度が高かったのは、セカンドラインの注射薬(アミカシン: 10.2% [6.3-16.0]; カナマイシン7.5% [4.6-11.9]; カプレオマイシン8.2% [6.3-10.7]), アミノサリチル酸(11.6% [7.1-18.3]), リネゾリド(14.1% [9.9-19.6])だった。解析に含まれた研究と除外される研究の間に重要な違いがなかったため、研究選択におけるバイアスリスクは低いと判断された。ただし、分析されたほとんどの結果について、研究間のばらつきは顕著だった。
結論:
フルオロキノロン、クロファジミン、ベダキリンは永続的中止にいたる副作用イベントの頻度が低く、セカンドラインの注射薬、アミノサリチル酸、リネゾリドは頻度が高かった。これらの結果は、MDRTB治療を受けている患者にとって副作用の綿密なモニタリングが重要であることを示唆している。この結果はまた、MDRTBの治療による不利益を減らすため、より安全かつ忍容性の高い薬物が望まれているともいえる。
by otowelt
| 2020-05-13 00:41
| 抗酸菌感染症