COVID-19:重症COVID-19に対するレムデシビルは臨床的改善と関連せず
2020年 04月 30日

・参考記事:COVID-19:SIMPLE試験:レムデシビルの早期治療効果
・参考記事:COVID-19:ACTT試験:レムデシビルはプラセボよりも回復が早い
Yeming Wang, et al.
Remdesivir in adults with severe COVID-19: a randomised, double-blind, placebo-controlled, multicentre trial
Lancet, DOI:https://doi.org/10.1016/S0140-6736(20)31022-9
背景:
COVID-19に対して効果がある、特異的な抗ウイルス治療は証明されていない。レムデシビルはSARS-CoV-2を含む動物・ヒトコロナウイルスの病原性に効果がある核酸アナログである。
方法:
われわれは中国武漢における10病院において、多施設共同のランダム化二重盲検プラセボ対照試験を実施した(18歳以上のSARS-CoV-2感染確定入院例のうち、症状発現から登録まで12日以下、SpO2≦94%あるいはP/F≦300mmHg、肺炎を有する患者)。患者は2:1の割合で、ランダムにレムデシビル(初日200mg、2-10日目100mg、1日1回点滴)あるいはプラセボに10日間割り付けられた。患者は、ロピナビル-リトナビル、インターフェロン、全身性ステロイドの併用を許可された。プライマリエンドポイントは、28日までの臨床的改善(ランダム化から2点以上の改善[6点スケール、1:退院~6:死亡]あるいは生存退院)とした。ITT集団でプライマリ解析がおこなわれ、安全性解析には全員が組み込まれた。
結果:
2020年2月6日~3月12日の間に、237人の患者がランダム化された(レムデシビル群158人、プラセボ群79人)。年齢中央値は65歳(IQR 56-71歳)で、レムデシビル群では男性が56%、プラセボ群では男性が65%だった。併存症でもっともよくみられたのは高血圧で、糖尿病、冠動脈疾患が続いた。18%の患者がロピナビル-リトナビルを使用していた。ベースラインの6点スケールは、ほとんどの患者が3点だった。症状発現から治療開始までの中央期間は10日(IQR9-12日)だった。入院中155人(66%)の患者が全身性ステロイドを使用されていた。
レムデシビルは、臨床的改善と関連していなかった(臨床的改善までの日数中央値21.0日 vs 23.0日、ハザード比1.23、95%信頼区間0.87-1.75)。また、統計学的に有意ではなかったものの、症状持続10日以下の患者においては、レムデシビル群はプラセボ群よりも臨床的改善が早かった(ハザード比1.52、95%信頼区間0.95-2.43)。有害事象は、レムデシビル群155人中102人(66%)、プラセボ群78人中50人(64%)で観察された。副作用のために投薬中止にいたったのは、レムデシビル群18人(12%)、プラセボ群4人(5%)だった。

ウイルス量は両群ともに同等の減少を示した。症状発現から治療開始までの日数で層別化しても、結果は同じだった。ベースラインの喀痰ウイルス量で層別化すると、5日目では両群有意差はなかったが、わずかにレムデシビル群のほうがウイルス量減少がすみやかであった(p=0.0672)。

28日死亡率について、両群で有意差はみられなかった(レムデシビル群22人[14%] vs プラセボ群10人[13%]、差1.1%[95%信頼区間-8.1~10.3])。
結論:
重症COVID-19の入院患者に対して、本研究ではレムデシビルは臨床的利益とは関連していなかった。しかしながら、早期に治療された患者の臨床的改善をみるためには、より大規模な検討が必要になる。
by otowelt
| 2020-04-30 16:09
| 感染症全般