COVID-19:Relloらによる5つのフェノタイプ
2020年 04月 30日

Jordi Rello, et al.
Clinical phenotypes of SARS-CoV-2: Implications for clinicians and researchers.
Eur Respir J 2020, DOI:https://doi.org/10.1183/13993003.01028-2020.
概要:
SARS-CoV-2のさまざまな表現型を認識することは、臨床医や研究者にとって、効果的かつ安全な治療的介入のために重要である。
もっとも良好なフェノタイプが、もっともよくみられるものであり、有症状者のみが治療の適応にある。発熱、頭痛、軽度の呼吸器症状によって特徴づけられ、胸部レントゲン写真は正常で、低酸素血症はない。
2つ目のフェノタイプは、入院患者の5分の4にみられ、低酸素血症や胸部レントゲン写真におけるわずかな陰影が同定される。進行しないかどうか、呼吸モニタリングが重要である。これらの患者は通常、強い炎症を起こしており、病院に到着したとき体液量は減少している。ゆえに、フロセミドの使用制限を考慮する必要がある。
フェノタイプ3は、入院患者の15%にみられる。低酸素血症と呼吸数の増加がみられる。低酸素血症の進行によりフェノタイプ2からフェノタイプ3に移行することがある。これら2フェノタイプの鑑別にはIL-6が有用である。フェノタイプ2あるいは3は抗ウイルス薬、抗炎症薬、抗線維化薬の臨床試験のよい適応である。非侵襲性換気を使用して挿管が遅れると急性肺傷害にいたることがある。吸入酸素濃度を高くしたり、自発呼吸下で腹臥位療法をやってもらうことで、人工呼吸器装着を回避できるかもしれない。
フェノタイプ4は挿管を要する重症低酸素血症の状態である。胸部CT写真では、下葉にうっ血がみられる。造影胸部CT写真では、広汎な多発性すりガラス陰影がみられ、しばしば微小塞栓性病変を有する。肺エコーでは、いわゆる"white lung"である間質性のB linesが観察される。挿管が遅れてはならない。適用できるなら、NOあるいはプロスタサイクリンの治療も考慮する。肺コンプライアンスは正常(>40mL/cm H2O)である。高PEEPは肺血行動態に悪影響を与える可能性がある。ゆえに、8-10cmH2Oにとどめるべきである。PEEP>10cmH2Oは有害である可能性があり、高用量の昇圧剤を要したり急性腎傷害と関連するため、管理が複雑になる。呼吸数は20回/分より少なくする必要がある。肺リクルートメント手技は有用ではないため避けるべきである。腹臥位療法によるメリットはこのフェイタイプでは明らかでなく、医療従事者の負担を増やすのみである。1回換気量>6mL/kgであっても、典型的なARDSと比べて害は少ないだろう。
フェノタイプ5は、フェノタイプ4よりは少ない。共感染あるいは急性肺傷害により、プロカルシトニンが上昇することがある。肺コンプライアンス<40mL/cm H2Oを示す。ARDSと同様の管理戦略で、高PEEPと腹臥位療法の恩恵があるかもしれない。

by otowelt
| 2020-04-30 23:23
| 感染症全般