IPFに対する抗線維化薬は死亡リスクを37%減少

IPFに対する抗線維化薬は死亡リスクを37%減少_e0156318_10574046.jpg 生存に有意差がつくほどの前向きランダム化がなかなか現実的でない観察期間ということもあり、このような変則的な解析になってしまうのは致し方のないところです。

Behr J, et al.
Survival and course of lung function in the presence or absence of antifibrotic treatment in patients with idiopathic pulmonary fibrosis: long-term results of the INSIGHTS-IPF registry.
Eur Respir J. 2020 May 7. pii: 1902279. doi: 10.1183/13993003.02279-2019.


背景:
 特発性肺線維症(IPF)の抗線維化療法に関する観察データは不足している。

目的:
 実臨床ベースにおける抗線維化薬の有無に応じたIPFの臨床経過について調べた。

方法:
 ドイツの間質性肺疾患(ILD)を専門とする20施設においてIPFと診断された連続患者を登録した非介入前向きコホート試験である。自動妥当性チェック、オンサイトモニタリング、ソースデータ検証により、データの質が保証された。抗線維化療法が適用された患者とされていない患者のベースライン特性の差を明らかにするため、傾向スコアが適用された。

結果:
 解析対象となった588人の平均年齢は69.8±9.1歳で、81.0%が男性だった。平均%FVCおよび%DLCOは、それぞれ68.6±18.8%、37.8±18.5%だった。平均追跡期間1.2±0.7年のあいだ、194人(32.0%)が死亡した。1年生存率は抗線維化薬あり群で87%、抗線維化薬なし群で46%、2年生存率はそれぞれ62%、21%だった。抗線維化薬を用いられた患者のほうが死亡リスクが37%低かった(ハザード比0.63、95%信頼区間0.45-0.87; p=0.005)。多変量解析においても結果は同様だった。経過中、FVCおよびDLCOの減少については群間差は有意ではなかった。
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(総死亡:文献より引用)

結論:
 抗線維化薬が用いられたIPF患者では有意に生存が良好だったが、肺機能パラメータの経過については群間差はみられなかった。これは、臨床診療において、FVCおよびDLCOが安定しているにもかかわらず、IPF患者の早期死亡が発生することを示唆している。




by otowelt | 2020-07-21 00:09 | びまん性肺疾患

近畿中央呼吸器センター 呼吸器内科の 倉原優 と申します。医療従事者の皆様が、患者さんに幸せを還元できるようなブログでありたいと思います。原稿・執筆依頼はメールでお願いします。連絡先:krawelts@yahoo.co.jp


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