筋無症候性皮膚筋炎関連間質性肺疾患におけるリスクスコアの考案:FLAIR

筋無症候性皮膚筋炎関連間質性肺疾患におけるリスクスコアの考案:FLAIR_e0156318_13542342.png 早期にフェリチンと抗MDA5抗体を測定することが重要ですね。

Xinyue Lian, et al.
Mortality risk prediction in amyopathic dermatomyositis associated with interstitial lung disease: the FLAIR model
CHEST DOI: https://doi.org/10.1016/j.chest.2020.04.057


背景:
  筋無症候性皮膚筋炎(amyopathic dermatomyositis:ADM)に関連した間質性肺疾患(ILD)は予後不良である。ADM-ILD患者の生存を予測し、臨床的治療を選択する上で、死亡リスクスコアモデルが必要である。

リサーチクエスチョン:
 どのように、ハイリスクのADM-ILD患者を同定し、リスク層別化モデルに基づいて患者アウトカムを予測するか。

スタディデザインおよび方法:
 われわれは、この前向き研究においてADM-ILD患者207人を登録した(142人が探索的コホート、67人が妥当性検証コホート)。診断はSontheimerの基準を用いておこなわれた。上海交通大学医学院の2012年1月~2016年12月までのデータを用いて、多変量Cox比例ハザードモデルにより独立予後予測リスク因子を同定し、リスクスコアモデルを作った。モデルの識別とキャリブレーションの両方を反映するためにBrierスコアを適用した予測精度インデックス(IPA)を用いた。モデルは、2017年1月~2018年6月に実患者において妥当性の検証がなされた。

結果:
 探索的コホート142人の平均年齢は50.1±10.9歳だった。非生存群のほうが生存群よりも高齢だった(P=0.007)。男性よりも女性のほうが多かったが、死亡率に性差はなかった(94人 vs 48人)。急速進行性ILD(RPILD)がある患者は非RPILD例より死亡率が高かった(P<0.001)。胸部HRCTスコアは、非生存群のほうが生存群よりも高かった(P<0.001)。また、嗄声が非生存群で多かった(p=0.034)。非生存群の患者は好中球リンパ球比が高く、フェリチン・LDHも生存群より高かった(P<0.001)。抗MDA5抗体は、生存群より非生存群で高値だった。
 多変量解析では、RIILD、胸部HRCTスコア、抗MDA5抗体、フェリチン、LDHが予後を予測する独立リスク因子だった(RPILD: ハザード比2.55, 95%信頼区間1.04-6.22, P=0.040; 胸部HRCTスコア:ハザード比6.24, 95%信頼区間1.47-12.56, P=0.013; 抗MDA5抗体: ハザード比1.48, 95%信頼区間1.01-2.16, P= 0.042; フェリチン:ハザード比2.62, 95%信頼区間1.18-5.83, P=0.018; LDH:ハザード比3.59, 95%信頼区間1.83-7.01, P= 0.001)。
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(多変量解析:文献より引用)

 これらから、われわれはFLAIRスコアを作成した。

 F:フェリチン(<636 ng/mL:0点、≧636 ng/mL:2点)
 L:LDH(<355 U/L:0点、≧355 U/L:2点)
 A:抗MDA5抗体(陰性:0点、+:2点、++:3点、+++:4点)
 I:胸部HRCTスコア(<133:0点、≧133:3点)
 R:RPILD (非RPILD:0点、RPILD:2点)

※胸部HRCTスコア:一見正常に みえる領域:スコア1、すりガラス状陰影:スコア2、浸潤影:スコア3、牽引性気管支・細気管支拡張像を伴うすりガラス状陰影:スコア4、牽引性気管支・細気管支拡張像を伴う浸潤影:スコア5、蜂巣肺:スコア6とし、左右の上、中、下肺野の6領域について、これらの各所見の広がりを目視によって10%単位で各領域に占める面積率(%)を決定。肺野全体のHRCTスコアは、各所見の広がり/面積率(%)の総和から6領域の平均面積率を算出し、対応するスコア(1~6)を乗じて、その総和をHRCTスコアとする。

 低リスク:0-4点
 中リスク:5-9点
 高リスク:10-13点

 モデル作成コホートと妥当性コホートのいずれにおいても、高リスク群は、低リスク群や中リスク群と比較して有意に死亡率が高かった(P<0.001)。
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(FLAIRスコア別の死亡率その1:文献より引用)

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(FLAIRスコア別の死亡率その2:文献より引用)

結論:
 FLAIRリスクスコアモデルは、ADM-ILD患者の生存を予測する。



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by otowelt | 2020-05-18 00:41 | びまん性肺疾患

近畿中央呼吸器センター 呼吸器内科の 倉原優 と申します。医療従事者の皆様が、患者さんに幸せを還元できるようなブログでありたいと思います。原稿・執筆依頼はメールでお願いします。連絡先:krawelts@yahoo.co.jp


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