COVID-19:唾液PCRと鼻咽頭・咽頭スワブの比較

COVID-19:唾液PCRと鼻咽頭・咽頭スワブの比較_e0156318_2201476.png この論文がプレプリントだった頃、ブログで紹介しようか迷いましたが、プレプリントに対する懸念が各所から出ているため、アクセプトされた後に書くことにしました。

・参考記事COVID-19:唾液PCRは妥当か? 

Pasomsub E, et al.
Saliva sample as a non-invasive specimen for the diagnosis of coronavirus disease-2019 (COVID-19): a cross-sectional study.
Clin Microbiol Infect. 2020 May 15. pii: S1198-743X(20)30278-0.


目的:
 COVID-19の症例数が増加する中、SARS-CoV-2を検出するための非侵襲的なサンプルを迅速かつ簡単に採取する方法が必要である。COVID-19の非侵襲的診断ツールとして、唾液サンプルの調査を行うことを目的とした。

方法:
 2020年3月27日から4月4日まで、COVID-19のアウトブレイク中に大学病院の急性呼吸器感染症クリニックで、被験者の唾液サンプルと標準的な鼻咽頭スワブ・咽頭スワブを前向きに収集した。RT-PCRを用いて検査され、2サンプルの結果が比較された。
 被験者は、濃厚接触があったか、14日以内にCOVID-19流行地域に行った者を対象とした。

結果:
 200対のサンプルが収集された。69人(34.5%)のCOVID-19患者は男性で、年齢中央値(IQR)は36(28-48)歳だった。鼻咽頭および咽頭スワブRT-PCRをコントロールとして使用した。同スワブによって診断されたCOVID-19の有病率は9.5%だった(200人中COVID-19患者19人)。コントロールと比較した唾液サンプルRT-PCRの感度と特異度は、それぞれ84.2%(95%信頼区間60.4%-96.6%)、98.9%(95%信頼区間 96.1%-99.9%)だった。陽性的中率は88.9% (95%信頼区間65.3%-152 98.6%), 陰性的中率は98.4% (95%信頼区間95.3-99.7%)だった。2検体間の一致率は、97.5%だった(κ係数0.851、95%信頼区間0.723-0.979; p <0.001)。
COVID-19:唾液PCRと鼻咽頭・咽頭スワブの比較_e0156318_2252321.png
(文献より引用)

結論:
 唾液は、COVID-19の診断のための代替サンプルとなる可能性がある。非侵襲的であり、エアロゾルを発生させない。この方法は、検体採取が簡単で、診断能が優れているため、COVID-19の診断を容易にするかもしれない。


by otowelt | 2020-05-20 00:45 | 感染症全般

近畿中央呼吸器センター 呼吸器内科の 倉原優 と申します。医療従事者の皆様が、患者さんに幸せを還元できるようなブログでありたいと思います。原稿・執筆依頼はメールでお願いします。連絡先:krawelts@yahoo.co.jp


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