化学療法による特発性間質性肺炎急性増悪の頻度

化学療法による特発性間質性肺炎急性増悪の頻度_e0156318_1372769.png ドセタキセルが結構厳しい数字ですね、やはり。

Minegishi Y, et al.
Acute exacerbation of idiopathic interstitial pneumonias related to chemotherapy for lung cancer: nationwide surveillance in Japan
ERJ Open Research 2020 6: 00184-2019; DOI: 10.1183/23120541.00184-2019


背景:
 化学療法による特発性間質性肺炎(IIPs)急性増悪は、重篤であり日本人の肺癌患者の治療を著しく阻害する。そこで、われわれは急性増悪のリスクを明確にし、この集団における化学療法の生存的利益と比較するべく、国内サーベイランスを実施した。

方法:
 IIPsのある進行非小細胞肺癌(NSCLC)あるいは小細胞肺癌(SCLC)が後ろ向きに解析された。2009年における1次治療サーベイランスで、われわれは1990年1月から2009年7月のあいだに19施設396人の患者の臨床データを収集した。2012年の継続的後ろ向き研究において、2002年4月から2012年3月までに2次治療を受けた17施設278人の患者データを解析した。

結果:
 396人が解析され、13.1%が化学療法関連急性増悪に発展した。カルボプラチン+パクリタキセルの併用(CP)あるいはカルボプラチン+エトポシドの併用(CE)がもっとも1次治療でよく用いられていた。CEはもっとも低い急性増悪率で、3.7%だった。CPは8.6%だった。
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(文献より引用)

 後ろ向き解析において、278人のうち16.2%が2次治療で化学療法関連急性増悪を起こした。
化学療法による特発性間質性肺炎急性増悪の頻度_e0156318_912131.png
(文献より引用)

 2次治療における客観的奏効率はNSCLCで7.4%、SCLCで25.7%だった。NSCLCにおける2次治療からの全生存期間は8.0ヶ月、1次治療からの全生存期間は14.3ヶ月だった。SCLCはそれぞれ8.7ヶ月、16.0ヶ月だった。

結論:
 IIPs合併進行肺癌患者における標準的1次治療の候補としてCPあるいはCEが挙げられる。2次治療は投与すべきかどうか熟考すべきである。



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by otowelt | 2020-06-06 00:18 | 肺癌・その他腫瘍

近畿中央呼吸器センター 呼吸器内科の 倉原優 と申します。医療従事者の皆様が、患者さんに幸せを還元できるようなブログでありたいと思います。原稿・執筆依頼はメールでお願いします。連絡先:krawelts@yahoo.co.jp


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