多剤耐性結核のLTBIに対するイソニアジド単剤治療は有効

多剤耐性結核のLTBIに対するイソニアジド単剤治療は有効_e0156318_9552565.jpg これは驚きました。

Chuan-Chin Huang, et al.
Isoniazid Preventive Therapy in Contacts of Multidrug-resistant Tuberculosis
AJRCCM, Published Online: June 17, 2020


背景:
 WHOはLTBIの治療においてイソニアジド単剤あるいはリファンペンチンとイゾニアジドの併用療法を推奨している。多剤耐性結核(MDRTB)の増加によりLTBI治療が複雑化してきた。

目的:
 MDRTB患者と接触した患者におけるイソニアジド単剤の予防治療の効果を評価すること。

方法:
 2009年9月~2012年8月に、前向きコホート研究において、4500人の結核患者と、14044人の接触者家族を同定した。その後、結核発症について接触者も1年追跡した。ペルーの国内ガイドラインでは、イソニアジド単剤治療は19歳以下に規定しているため、全体の半数のみがイソニアジド単剤治療を受けることとなった。

結果:
 19歳以下の接触者4216人のうち、2106人(50%)がイソニアジド単剤治療を受けた。薬剤感受性結核に曝露した接触者におけるイソニアジドの結核発症予防効果は優れていた(補正ハザード比0.30、95%信頼区間0.18-0.48)。また、MDRTBに曝露した場合の予防効果は、イソニアジド耐性結核に曝露した場合よりも優れていた(MDRTB:補正ハザード比0.19、95%信頼区間0.05-0.66 vs イソニアジド耐性結核:補正ハザード比0.80、95%信頼区間0.23-2.80)。
 独立した2つ目の研究においても、イソニアジド単剤治療を受けた76人の接触者家族のうち1人も結核を発症せず、単剤治療を受けなかった接触者家族では273人中8人(3%)に結核を発症した。

結論:
 たとえMDRTBであろうとも、結核菌に曝露された接触者家族に対するイソニアジド単剤治療は結核発症を予防する効果がある。MDRTBのLTBIマネジメントにおけるイソニアジドは有効かもしれない。





by otowelt | 2020-07-23 00:44 | 抗酸菌感染症

近畿中央呼吸器センター 呼吸器内科の 倉原優 と申します。医療従事者の皆様が、患者さんに幸せを還元できるようなブログでありたいと思います。原稿・執筆依頼はメールでお願いします。連絡先:krawelts@yahoo.co.jp


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