COVID-19:サイトカイン放出症候群に対するトシリズマブ
2020年 06月 21日

Price CC, et al.
Tocilizumab treatment for Cytokine Release Syndrome in hospitalized COVID-19 patients: survival and clinical outcomes.
Chest. 2020 Jun 15. pii: S0012-3692(20)31670-6. doi: 10.1016/j.chest.2020.06.006.
背景:
インターロイキン-6受容体抗体であるトシリズマブは、COVID-19のケースシリーズにおいてサイトカイン放出症候群(CRS)を改善させるとされている。
リサーチクエスチョン:
入院COVID-19患者に対するトシリズマブに利益はあるか?
試験デザインおよび方法:
連続したCOVID-19患者の観察研究である。CRSをターゲットとしてCOVID-19患者をトシリズマブによって治療した。14日目の生存と人工呼吸器装着アウトカムが重症度ごとに層別化して調べられた。トシリズマブ治療患者は、事前・事後の臨床反応性が分析され、バイオマーカーと安全性も調べられた。人種ごとに事後生存分析が適用された。
結果:
239人の年齢中央値は64歳で、36%が黒人、19%がヒスパニックだった。入院患者は指数関数的に増加したが、人工呼吸器装着患者はそこまでの増加はなかった。重症の症例は生存率が低く(78% vs 93%; p<0.001)、人工呼吸器装着が多く(44% vs 5%; p<0.001)、人工呼吸器装着期間が長かった(5.5日 vs 1.0日; p=0.003)。トシリズマブ治療患者(153人、64%)は90%が重症であり、非重症でトシリズマブ治療を受けた44%がCRSだった。重症例のトシリズマブ治療患者は入院時の高感度CRPが高く(120 vs 71mg/L; p<0.001)、トシリズマブ投与が迅速だった(2日 vs 3日; p<0.001)が、非重症例と生存率は同等だった(83% vs 91%; p=0.11)。人工呼吸器装着を要したトシリズマブ治療患者の生存率は75%だった(95%信頼区間64%-89%)。トシリズマブ治療後にいくつかの副作用イベントが起こったが、酸素化や炎症性バイオマーカーは改善した。しかしながら、D-dimerやs-IL-2Rは有意に上昇した。年齢で補正すると、黒人やヒスパニックにおける生存率は、白人より有意に高かった(p=0.002)。
結論:
CRSをターゲットにしたトシリズマブ治療アルゴリズムは、COVID-19患者の人工呼吸器装着や生存に関して影響を与えるかもしれない。トシリズマブ治療を受けた患者では、酸素化や炎症性バイオマーカーが改善した。これらの知見を確認するためにはランダム化比較試験が必要である。
by otowelt
| 2020-06-21 00:41
| 感染症全般