COVID-19:トシリズマブは重症COVID-19患者の血管作動薬必要期間を短縮する

COVID-19:トシリズマブは重症COVID-19患者の血管作動薬必要期間を短縮する_e0156318_2201476.png アクテムラ!(2回目)

Tariq Kewan, et al.
Tocilizumab for treatment of patients with severe COVID–19: A retrospective cohort study
EClinicalMedicine, Published:June 20, 2020DOI:https://doi.org/10.1016/j.eclinm.2020.100418


背景:
 トシリズマブは、CAR-T療法によるサイトカイン放出症候群に承認されているが、選択的なCOVID-19患者に対する臨床的利益があるかもしれない。

方法:
 この後ろ向きコホート研究において、われわれは2020年3月13日~4月19日に入院した低酸素血症のあるCOVID-19患者を解析した。肺の浸潤影があり、炎症性バイオマーカーが上昇している患者が、禁忌がない場合に限ってトシリズマブの単回投与を受けた。全身性ステロイド、ヒドロキシクロロキン、アジスロマイシンはほとんどの患者で併用された。

結果:
 解析に組み込まれた51人のうち、28人(55%)がトシリズマブ投与を受け、23人(45%)がトシリズマブ投与を受けなかった。トシリズマブコホートの患者は、ベースライン時で侵襲性換気を受けている頻度が高く(68% vs 22%)、入院全体においても侵襲性換気を受けている頻度が高かった(75% vs 48%)。人工呼吸管理を受けている患者の間では、臨床的改善がみられるまでの中央期間はトシリズマブ群と非トシリズマブ群でそれぞれ8日(IQR 6.25 – 9.75 日)、13日(IQR9.75 – 15.25日)だった(ハザード比1.83, 95%信頼区間0.57–5.84)。全体の患者においては、それぞれ6.5日、7日だった(ハザード比1.14, 95%信頼区間0.55 – 2.38)。血管作動薬が必要となった期間の中央値はトシリズマブ群と非トシリズマブ群でそれぞれ2日(IQR1.75 – 4.25日)、5日(IQR 4 – 8日)(p = 0.039)で、侵襲性換気を要した期間の中央値はそれぞれ7日 (IQR4 – 14日)、10日(IQR5 – 15日)だった(p = 0.11)。院内感染の頻度は両群同等だった(18% vs 22%)。
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(文献より引用)
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(文献より引用)

結論:
 重症COVID-19患者では、トシリズマブ投与は血管作動薬の必要期間を有意に短縮した。また、統計学的に有意ではないが、臨床的改善や侵襲性換気を要する期間も短い傾向にあった。



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by otowelt | 2020-06-21 09:28 | 感染症全般

近畿中央呼吸器センター 呼吸器内科の 倉原優 と申します。医療従事者の皆様が、患者さんに幸せを還元できるようなブログでありたいと思います。原稿・執筆依頼はメールでお願いします。連絡先:krawelts@yahoo.co.jp


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