スピリーバ®レスピマットの誤った使用は多い

スピリーバ®レスピマットの誤った使用は多い_e0156318_1312221.png 空打ちと回転操作は、動画さえあれば大丈夫だと思いますが、中国ではそういうわけにもいかないでしょうか。

Zhang W, et al.
Technical Evaluation of Soft Mist Inhaler Use in Patients with Chronic Obstructive Pulmonary Disease: A Cross-Sectional Study.
Int J Chron Obstruct Pulmon Dis. 2020 Jun 22;15:1471-1479.


背景:
 適切な吸入手技は、COPD治療の効果を高める上で重要である。チオトロピウム臭化物スプレー(スピリーバレスピマット)はその利便性から、加圧式定量噴霧吸入器(pMDI)およびドライパウダー吸入器(DPI)よりも患者に好まれているソフトミスト吸入器である。しかしながら、実臨床における手技の問題についてはまだ不明確である。

目的:
 スピリーバレスピマットの手技について評価し、患者背景とレスピマットの適切な使用の関連性を調べること。

方法:
 3ヶ月以上スピリーバレスピマットを用いている74人のCOPD患者を登録した横断研究である。社会的および臨床的背景が記録された。レスピマットの手技は段階的に評価された。誤った使用は、患者が吸入操作の主要なステップをクリアできないことと定義した。誤った使用をしている割合を比較し、これに関連するリスク因子をロジスティック回帰分析によって分析した。

結果:
 74人の患者のうち、2人(2.7%)のみが正しく手技の全ステップをクリアし、48人(64.9%)が吸入手技の主要なステップに誤りがみられた。誤った使用は、初回使用時の準備段階(キャップを閉じて、回転作業を行い、ボタンを押して空打ちを行い、吸入器が使用できる状態にあることを確認する)で77.0%にのぼった。誤った使用に関連するリスク因子は、教育水準(p=0.010)、居住状況(p=0.031)、CATスコア(p=0.005)であった。加えて、ロジスティック回帰分析では、COPD罹病期間は有意に誤った使用と関連していた(p=0.019)。
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(文献より引用)

 高い教育水準にある患者と比較して、小学校レベル(オッズ比11652.99, 95%信頼区間22.72-5975697.72)、中学校レベル(オッズ比7187.78, 95%信頼区間16.41-3146787)、高校レベル(オッズ比1563, 95%信頼区間4.27-572329.67)はもっともレスピマットの誤った使用と関連していた。
 独居で生活している患者は、子供と生活している患者よりも誤った使用が多かった(オッズ比12.29, 95%信頼区間1.14-1.96)。COPDの症状は、デバイスの手技側面と関連していた。手技が問題なくおこなえる患者はCATスコアが低かった(オッズ比1.49, 95%信頼区間1.14-1.96)。

結論:
 COPDにおけるスピリーバレスピマットの誤った使用が多い。医療従事者は、薬剤についての説明だけでなく、吸入手技についてしっかり説明する必要がある。COPD罹病期間が短い患者、教育水準が低い患者、子供と生活していない患者では、誤って使用するリスクが高い。



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by otowelt | 2020-08-21 00:39 | 気管支喘息・COPD

近畿中央呼吸器センター 呼吸器内科の 倉原優 と申します。医療従事者の皆様が、患者さんに幸せを還元できるようなブログでありたいと思います。原稿・執筆依頼はメールでお願いします。連絡先:krawelts@yahoo.co.jp


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