MTXはRA-ILDリスクを上昇させない
2020年 07月 12日

乾癬や炎症性腸疾患に対する知見(BMJ . 2015 Mar 13;350:h1269.)に基づいて、MTXそのものがRA-ILDに関連している可能性が低いことを自著に記載したところ、「倉原先生はMTXのこわさを知らないのでしょうか」というクレームをいただいたことがあります。
免疫抑制剤のこわさはイヤというほど知っていますが、呼吸器内科医はMTXをこわがりすぎなのかもしれません。
MTXはRA-ILDに関連しているどころか、むしろILDの発生を遅らせる保護的な役割すらあるという見解もあります(BMJ Open. 2019;9(5):e028466)。
Juge PA, et al.
Methotrexate and rheumatoid arthritis associated interstitial lung disease.
Eur Respir J. 2020 Jul 9. pii: 2000337. doi: 10.1183/13993003.00337-2020.
概要:
MTXは関節リウマチ(RA)マネジメントのアンカードラッグである。線維性間質性肺疾患(ILD)は、RAの合併症として確かによくみられる。しかし、MTX曝露がRAにおけるILDのリスクを増加させるのかどうかはわかっていない。われわれは、先行するMTXの使用とRA-ILDの関連性を調べた。
方法:
探索的な症例対照研究と、国際的な複製サンプルを用いて、MTX曝露とILDの関連性を調べた。RA-ILD患者410人とILDのないRA患者673人において、MTX曝露とILDの関連を評価した。メタアナリシスにより、異なるサンプルの推定値をプールした。
結果:
探索的サンプルの解析では、MTX曝露とRA-ILDには逆相関がみられた(補正オッズ比0.46; 95% 信頼区間0.24-0.90; p=0.022)。両サンプルを統合した推定値ではオッズ比は0.43となった(95%信頼区間0.26-0.69、p=0.0006)。過去MTXを使用したことがある人は、RA-ILD患者では非ILD患者より頻度が低かった。RA-ILD患者では、MTX使用者のほうが非使用者よりもILDの同定が遅かった(11.4±10.4年 vs 4.0±7.4年, p<0.001)。

結論:
MTX使用はRA-ILDのリスク上昇と関連していなかった。ILDは、MTX治療患者では同定が遅延した。
by otowelt
| 2020-07-12 00:00
| 膠原病