IPFに対するプロトンポンプ阻害剤は死亡リスク・入院リスクを低下させない

IPFに対するプロトンポンプ阻害剤は死亡リスク・入院リスクを低下させない_e0156318_1033185.png 効果を実感している呼吸器内科医はほとんどいないと思います。

Tanja Tran, et al.
Effectiveness of proton pump inhibitors in idiopathic pulmonary fibrosis: a population-based cohort study
Chest. 2020 Aug 31;S0012-3692(20)34310-5


背景:
 胃食道逆流症(GERD)は、特発性肺線維症においてよくみられ、進行に寄与するかもしれない。プロトンポンプ阻害剤(PPI)による制酸剤治療は、IPF治療の潜在的選択肢である。しかしながら、この治療エビデンスは、バイアスの影響を受けたいくつかの観察研究から得られている。

リサーチクエスチョン:
 IPF患者におけるPPIの使用が、総死亡率、呼吸器関連死亡率、呼吸器関連入院を減らすかどうか?

試験デザインおよび方法:
 2003~2016年の間にIPFと診断された患者コホートを特定するために、英国臨床診療研究データリンクを使用した。新規使用者のコホートは、傾向スコアを用いてマッチ使用者と比較された。Coxモデルを使用して、死亡および呼吸関連入院のハザード比および95%信頼区間を推定した。

結果:
 IPFコホート内において、1852人のPPI使用者が、1852人の非使用者と比較された。生存期間中央値は2.8年だった(死亡率:100人年あたり26.7)。PPI使用者の、非使用者と比較して総死亡のハザード比は1.07(95%信頼区間0.94-1.22)だった。呼吸器関連死亡のハザード比は1.10 (95%信頼区間0.94-1.28)で、呼吸器関連入院のハザード比は1.00 (95%信頼区間0.86-1.16)だった。

結論:
 実臨床でIPF患者を対象に実施されバイアスを回避するように設計された大規模な研究において、PPIの使用は死亡率や入院率の低下と関連していなかった。PPIは、一部の研究で支持され、ガイドラインで条件付きで推奨されているほどIPFの治療に有益ではないかもしれない。





by otowelt | 2020-09-29 00:00 | びまん性肺疾患

近畿中央呼吸器センター 呼吸器内科の 倉原優 と申します。医療従事者の皆様が、患者さんに幸せを還元できるようなブログでありたいと思います。原稿・執筆依頼はメールでお願いします。連絡先:krawelts@yahoo.co.jp


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