全身性強皮症関連間質性肺疾患に対するアクテムラ

全身性強皮症関連間質性肺疾患に対するアクテムラ_e0156318_2233180.png アクテムラの名前をよく聞きます。COVID-19の影響ですが。

Khanna D, et al.
Tocilizumab in systemic sclerosis: a randomised, double-blind, placebo-controlled, phase 3 trial.
Lancet Respir Med. 2020 Aug 28;S2213-2600(20)30318-0.


背景:
 トシリズマブの第2相試験では、全身性強皮症(SSc)における有効性のエビデンスが示された。SScの治療における抗インターロイキン6受容体抗体であるトシリズマブの安全性と有効性を調査するために、第3相試験で皮膚硬化とSSc-ILDを評価した。

方法:
 多施設共同ランダム化二重盲検プラセボ対照第3相試験において、ヨーロッパ、北アメリカ、南アメリカ、日本の20ヶ国75施設から被験者が登録された。びまん皮膚硬化型SScと診断されて60ヶ月以内で修正Rodnan皮膚スコア(mRSS)が10-35点の患者をランダムに1:1の割合で、トシリズマブ162mgあるいはプラセボを毎週投与する群に48週間割り付けられた。患者群はIL-6レベルによって層別化され、被験者と研究者は治療群について盲検化された。プライマリエンドポイントは、ベースラインから48週までのmRSSの変化とした。48週時点の%予測努力性肺活量、治療失敗までの期間、患者報告・主治医報告アウトカムがセカンダリエンドポイントに設定された。

結果:
 2015年11月20日から2017年2月14日までに、210人の患者がランダムにトシリズマブ群(104人)あるいはプラセボ群(106人)に割り付けられた。ITT集団において、ベースラインから48週までのmRSSの最小二乗平均(LSM)変化は、トリシズマブ群-6.14、プラセボ群-4.41だった(補正差-1.73、95%信頼区間-3.78~0.32, p=0.10)。48週時の%FVCの変化量分布の推移は、プラセボ群よりトシリズマブ群において良好で(van Elteren nominal P=0.002)、LSM差は4.2だった(van Elteren nominal P=0.0002)。治療失敗までの期間もトシリズマブ群で良好だった(ハザード比0.63、95%信頼区間0.37-1.06、p=0.08)。トリシズマブとプラセボ群でHAQ(Health Assessment Questionnaire)、VASのベースラインからの48週までのLSM差は観察されなかった。感染症がもっともよくみられた有害事象であった(トリシズマブ群104人中54人[52%]、プラセボ群106人中[50%])。重篤な有害事象はトシリズマブ群の13人、プラセボ群の18人にみられた。

結論:
 皮膚硬化エンドポイントに対してトリシズマブは有意な効果をもたらさなかった。%FVCのセカンダリエンドポイントの所見は、トシリズマブが初期のSSc-ILDおよび急性期反応物質の上昇を伴う患者の肺機能を維持する可能性があることを示している。 安全性は、トシリズマブの既知のプロファイルと一致していた。



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by otowelt | 2020-09-26 00:54 | びまん性肺疾患

近畿中央呼吸器センター 呼吸器内科の 倉原優 と申します。医療従事者の皆様が、患者さんに幸せを還元できるようなブログでありたいと思います。原稿・執筆依頼はメールでお願いします。連絡先:krawelts@yahoo.co.jp


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