COVID-19:P/F比200-300mmHgの肺炎例に対するトシリズマブ
2020年 10月 22日

背景:
COVID-19のパンデミックは、世界中で何十億人もの人々をおびやかしている。トシリズマブは良好な安全性プロファイルを有し、後ろ向き試験においてCOVID-19肺炎患者を対象に有望な結果を示している。
目的:
COVID-19肺炎で入院した患者の臨床的悪化を予防する上での早期トシリズマブ投与と標準治療の効果を評価すること。
方法:
2020年3月31日~6月11日の間に、イタリアの24病院に入院したCOVID-19患者をトシリズマブ+標準治療または標準治療のいずれかにランダム化した。COVID-19は鼻咽頭スワブによるPCRで確定された。適格基準は、胸部画像検査で肺炎があり、P/F比が200〜300mmHgで、発熱・CRP上昇で定義された炎症性フェノタイプを有するものとした。
介入:
ランダム化から8時間以内にトシリズマブの静脈内投与(8mg/kg~最大800mg)を受け、12時間後に2回目が投与された。コントロール群の患者は、臨床的に悪化するまで各施設プロトコルに従って治療を受け、その後、救済治療としてトシリズマブを受けることが許可された。全身性ステロイドの使用など、通常治療は全例許可されている。
主要評価項目:
複合アウトカムは、侵襲的人工呼吸によるICU入室、総死亡、P/F比150mmHg未満のいずれかを満たすものと定義された。
結果:
合計126人の患者がランダム化さた(トシリズマブ群60人、コントロール群66人)。年齢中央値(IQR)は60.0(53.0-72.0)歳で、患者の大多数は男性だった(126人中77人、61.1%)。3人の患者が研究から外れ、123人の患者がITT解析の対象となった。トシリズマブ群の60人中17人(28.3%)および標準治療群の63人中17人(27.0%)は、ランダム化から14日以内に臨床的悪化を示した(率比1.05; 95%信頼区間0.59-1.86)。介入群の2人とコントロール群の1人はランダム化から30日までに死亡し、それぞれ6人と5人が挿管された。中間報告で無益性と判断され、早期中止となった。
(臨床的悪化:文献より引用)

結論:
P/F比200~300mmHgのCOVID-19肺炎におけるランダム化比較試験ではトシリズマブは標準治療と比較して疾患進行に対する利益は観察されなかった。
by otowelt
| 2020-10-22 01:20
| 感染症全般