COVID-19:中等症例に対するトシリズマブは挿管・死亡アウトカムを改善せず
2020年 10月 22日

NEJMからもアクテムラ。
背景:
機械的人工呼吸を受けていないCOVID-19の入院患者におけるIL-6受容体を遮断する有効性はわかっていない。
方法:
過剰炎症期にあるCOVID-19患者(発熱>38℃、肺の浸潤影、SpO2 92%を維持するために酸素療法を要する)を対象としたランダム化二重盲検プラセボ対照試験を実施した。患者は、標準治療に加えてトシリズマブ(8mg/kg)またはプラセボのいずれかの単回投与を受ける群に2:1の割合でランダムに割り付けられた。プライマリアウトカムは挿管または死亡で、イベントまでのtime-to-event分析で評価された。セカンダリアウトカムは、ベースラインで酸素投与を受けていた患者の臨床的悪化および酸素投与の中止とした。
結果:
243人の患者が登録された。141人(58%)が男性で、102人(42%)が女性だった。年齢中央値は59.8歳(範囲21.7〜85.4歳)で、患者の45%がヒスパニックまたはラテン系だった。プラセボ群と比較したトシリズマブ群の挿管または死亡のハザード比は0.83(95%信頼区間0.38〜1.81; P = 0.64)であり、疾患増悪のハザード比は1.11(95%信頼区間0.59〜2.10; P = 0.73)だった。14日目時点で、トシリズマブ群の18.0%とプラセボ群の14.9%が臨床的に増悪した。酸素投与中止までの期間の中央値は、トシリズマブ群で5.0日(95%信頼区間3.8〜7.6)、プラセボ群で4.9日(95%信頼区間3.8〜7.8)だった(P = 0.69)。14日目時点で、トシリズマブ群の24.6%とプラセボ群の21.2%はまだ酸素投与を受けていた。トシリズマブを投与された患者は、プラセボを投与された患者よりも重篤な感染が少なかった。
結論:
トシリズマブには、中等症の入院COVID-19患者の挿管または死亡を防ぐ効果はみられなかった。ただし、有効性比較の信頼区間が広かったため、一部の患者の利益や有害性は否定できない。
by otowelt
| 2020-10-22 23:21
| 感染症全般