(1)発症日から10日間経過し、かつ、症状軽快後72時間経過した場合
(2)発症日から10日間経過以前に症状軽快した場合に、症状軽快後24時間経過した後に核酸増幅法または抗原定量検査の検査を行い、陰性が確認され、その検査の検体を採取した24時間以後に再度検体採取を行い、陰性が確認された場合
ほとんどの入院例は、(1)を適用して退院します。しかし、前述したように自宅などに戻れない方は、COVID-19病棟でそのまま入院を継続するか、他の病院に転院を引き受けてもらうかのどちらかしかありません。当初、COVID-19病棟からの退院にはPCR陰性を連続2回確認する必要がありましたが、2020年6月に大きく緩和され、発症後10日経過すれば多くの患者さんが退院できるようになりました。しかし、「連続2回のPCR陰性化」という選択肢は退院基準(2)に残ったままです((2)が残されているのは、例えば1、2日で症状が軽快したような軽症入院患者さんを退院させるときに適用する基準が必要だからです)。
そのためなのか、現在も転院先候補から「転院は引き受けることが可能だが、PCR陰性を確認してほしい」と条件を付けられることがあります。(1)を満たしていても、できればPCR陰性化を見てほしいということです。その結果、「本来は退院できるのにもかかわらずPCR検査を行い、陽性が出たために退院させられない」という事例が数多く生じています。中には、一体いつまで陽性が続くのかと途方に暮れる“エンドレス陽性現象”も存在します。特に重症例や両側肺炎例では、陰性化まで数十日を要することがあります。
2020年11月25日、厚生労働省は「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律における新型コロナウイルス感染症患者の退院の取扱いについて(再周知)」という通達を出しました(URL:
https://www.mhlw.go.jp/content/000698210.pdf)。ここには、「
発熱等の症状が出てから7日~10日程度経つと、新型コロナウイルス感染者の感染性は急激に低下し、PCRで検出される場合でも感染性は極めて低いことが分かってきています。よって、発症日から10日間経過し、かつ症状軽快後72時間経過した場合には、2回のPCR検査の結果陽性であった場合であっても、感染性は極めて低いため、退院可能としていることを改めて申し添えます」という記述があります。「再周知」を出しているくらいですから、国もこの問題を把握してくれているのだと思います。
それでも、私の住む地域ではそれが現場レベルで浸透するには至っていません。地域の保健所や、COVID-19患者の入院先を調整する大阪府の「入院フォローアップセンター」にも相談させてもらったことがあるのですが、回復後の転院調整については個々の施設同士での話し合いになることが多いのが現状です。
重症者・中等症者向け病床が逼迫している今、退院できなくなった回復者でこれらの病床があふれかえる事態だけは避けたいものです。