COVID-19:レムデシビル+バリシチニブの併用療法

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 ベクルリー+オルミエント。Kaplan-Meier曲線は、一部のサブグループ(スケール6)だけ差が目立ちます。

Kalil AC, et al.
Baricitinib plus Remdesivir for Hospitalized Adults with Covid-19.
N Engl J Med . 2020 Dec 11. doi: 10.1056/NEJMoa2031994.


背景:
 重症のCOVID-19は、調節できない炎症と関連している。JAK阻害剤であるバリシチニブ+レムデシビルの併用療法の効果はわかっていない。

方法:
 入院COVID-19成人患者を対象に、バリシチニブとレムデシビルを評価する二重盲検ランダム化プラセボ対照試験を実施した。レムデシビル(≦10日)+バリシチニブ(≦14日)またはレムデシビル+プラセボのいずれかを投与さた。プライマリアウトカムは回復までの時間とした。重要なセカンダリアウトカムはランダム化から15日目の臨床状態とした。

結果:
 合計1033人の患者がランダム化された(515人:バリシチニブ併用群、518人:プラセボ併用群)。バリシチニブ併用群の回復までの期間中央値は7日(95%信頼区間6〜8)だったが、プラセボ併用群では8日(95%信頼区間7〜9)だった(率比1.16; 95%信頼区間1.01〜1.32; P = 0.03)。また、ランダム化から15日目の臨床状態の改善のオッズは30%高かった(オッズ比1.3; 95%信頼区間1.0〜1.6)。登録時に高流量酸素または非侵襲性換気を受けた患者にしぼると、回復までの期間中央値はバリシチニブ併用群で10日、プラセボ併用群で18日だった(率比1.51; 95%信頼区間1.10〜2.08)。 28日死亡率は、併用群で5.1%、プラセボ併用群で7.8%だった(ハザード比0.65; 95%信頼区間0.39〜1.09)。プラセボ併用群よりもバリシチニブ併用群の方が重篤な有害事象(16.0% vs 21.0%;差-5.0%ポイント; 95%信頼区間-9.8〜-0.3; P = 0.03)、新規感染( 5.9% vs 11.2%;差-5.3%ポイント; 95%信頼区間-8.7〜-1.9; P = 0.003)の頻度が低かった。

結論:
 バリシチニブとレムデシビルの併用は、COVID-19患者における回復時間を短縮し、特に高流量酸素または非侵襲性換気を受けた患者の臨床状態の改善を加速する点では、レムデシビル単独よりも優れていた。また、この組み合わせは重篤な有害事象の減少と関連していた。




by otowelt | 2020-12-12 14:21 | 感染症全般

近畿中央呼吸器センター 呼吸器内科の 倉原優 と申します。医療従事者の皆様が、患者さんに幸せを還元できるようなブログでありたいと思います。原稿・執筆依頼はメールでお願いします。連絡先:krawelts@yahoo.co.jp


by 倉原優
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