COVID-19:EMPACTA試験:トシリズマブは人工呼吸または死亡の複合アウトカムを改善

COVID-19:EMPACTA試験:トシリズマブは人工呼吸または死亡の複合アウトカムを改善_e0156318_2201476.png ロシュからすでにプレスリリースが出ていた試験です。アクテムラの使いどころは悩みますが、オルミエントを使っている施設は耳にしないですね。



背景:
 COVID-19の肺炎は、しばしば過剰な炎症と関連している。COVID-19による入院している集団における抗IL-6受容体抗体であるトシリズマブの安全性と有効性は不明である。

方法:
 COVID-19肺炎で入院し、機械的人工呼吸を受けていない患者に、標準治療に加えてトシリズマブ(8mg/kg)またはプラセボを1or2回投与するのいずれかの集団にランダムに割りつけた。医療サービスを十分に受けられていないマイノリティ患者を中心に組み入れた。プライマリアウトカムは、機械的人工呼吸または28日目までの死亡の累積割合とした。

※18歳以上のSARS-CoV-2感染が確認された入院患者で、室内気の酸素飽和度が94%未満で、非侵襲的または侵襲的な人工呼吸器を必要としない患者

結果:
 アメリカ、南アフリカ、ケニア、ブラジル、メキシコ、ペルーから389人の患者が登録された。修正ITT集団には、トシリズマブ群249人、プラセボ群128人の患者が含まれた。56.0%はヒスパニックorラテン系、14.9%は黒人、12.7%はアメリカインディアンorアラスカ先住民、12.7%は非ヒスパニック系白人、3.7%はその他だった。人工呼吸器を適用された患者または28日目までに死亡した患者の累積割合は、トシリズマブ群で12.0%(95%信頼区間8.5-16.9)、19.3%(95%信頼区間13.3-27.4)だった。プラセボと標準的な医療を受けた患者群と比較し、人工呼吸器の使用または死亡に至る可能性がトシリズマブ群で44%低下した(ハザード比0.56、95%信頼区間0.33-0.97、p=0.04)。投与開始28日目までに人工呼吸器の使用まで進行または死亡した患者の割合は、トシリズマブ群10.4%、プラセボ群8.6%だった(加重差2.0%ポイント、95%信頼区間–5.2-7.8)。順序尺度を用いて評価した投与開始28日目までの臨床状態改善に要した期間にも、有意差はなかった(日数中央値6 vs 7日、ハザード比1.15)。安全性解析では、重篤な有害事象がトシリズマブ群の38/250例(15.2%)およびプラセボ群の25/127例(19.7%)で発生した。

結論:
 機械的人工呼吸を受けていなかったCOVID-19患者において、トシリズマブは人工呼吸または死亡の複合アウトカムを改善したが、生存率は改善しなかった。




by otowelt | 2020-12-18 11:55 | 感染症全般

近畿中央呼吸器センター 呼吸器内科の 倉原優 と申します。医療従事者の皆様が、患者さんに幸せを還元できるようなブログでありたいと思います。原稿・執筆依頼はメールでお願いします。連絡先:krawelts@yahoo.co.jp


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