IPFに対するST合剤

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 Thoraxの報告は、8年前でしたか。都市伝説がまた1つ消えた。



背景:
 特発性肺線維症(IPF)は予後が悪く、治療の選択肢が限られている。IPFの患者は肺の微生物叢が通常から変化しており、肺内の細菌負荷が死亡率に関連しているとされている。過去の研究で、ST合剤の利益が示唆されている。

目的:
 中等度および重度のIPF患者におけるST合剤の有用性を調べること。

方法:
 mMRC>1、%努力性肺活量≦75%のIPF患者342人に対する二重盲検プラセボ対照並行ランダム化試験を実施した。研究機関は2015年4月(最初の患者訪問)~2019年4月(最後の患者追跡時)で、イギリスの39の間質性肺疾患センターでおこなわれた。参加者は、ST合剤960mg1日2回(170人)あるいはプラセボ1日2回(172人)を12~42ヶ月投与されるようランダム化された。全患者は、1日1回5mgの葉酸を経口投与した。プライマリアウトカムは死亡までの期間、肺移植、初回の入院のいずれかとした。セカンダリアウトカムには15項目が含まれ、呼吸器関連イベント、肺機能(努力性肺活量、ガス交換能)、患者報告アウトカム(mMRCスケール、EuroQOL質問票、咳嗽重症度、LCQ、KBILD質問票スコア)などが含まれた。

結果:
 ランダム化された342人(平均年齢71.3歳; 46 [13%]が女性)のうち、283人(83%)が試験を完遂した。追跡期間中央値は1.02年だった(IQR 0.35-1.73年)。1人年あたりのプライマリイベントは、ST合剤群とプラセボ群でそれぞれ0.45(84/186)と0.38(80/209)であり、ハザード比は1.2だった(95%信頼区間0.9-1.6]; P =0.32)。その他のアウトカムには有意差はなかった。ST合剤群の患者は696件の有害事象(悪心[n = 89]、下痢[n = 52]、嘔吐[n = 28]、発疹[n = 31])を示し、プラセボ群の患者は640件だった(悪心[n = 67]、下痢[n = 84]、嘔吐[n = 20]、発疹[n = 20])。

結論:
 中等度または重度のIPF患者では、経口ST合剤による治療はプラセボと比較して、死亡・肺移植・入院までの期間の複合アウトカム改善に寄与しなかった。







by otowelt | 2021-01-14 00:39 | びまん性肺疾患

近畿中央呼吸器センター 呼吸器内科の 倉原優 と申します。医療従事者の皆様が、患者さんに幸せを還元できるようなブログでありたいと思います。原稿・執筆依頼はメールでお願いします。連絡先:krawelts@yahoo.co.jp


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