コロナづくしの1年でした、来年もよろしくお願い申し上げます

 Medical Tribuneのコラムから主にCOVID-19に対する私の見解を抜粋し、年末年始の挨拶とさせていただきたいと思います。来年も「呼吸器内科医」をよろしくお願い申し上げます。


1. まさか...自分がCOVID-19病棟の診療に従事するとは
 皆さん存じ上げているように、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が想定外の拡大を続けている。2019年12月に中国・武漢市で発生したこのウイルス感染症を、まさか数カ月後、自分自身がたくさん診ることになるとは思いもしなかった。私は軽症~中等症を主に診療しており、当初20床だった当院のコロナ病床も、2020年12月からは45床で運用している。

 さて、この感染症は実に"中途半端"であった。致死率がインフルエンザほど低くなく、重症呼吸器症候群(SARS)や中東呼吸器症候群(MERS)ほど高くないため、一定の感染力を持ちながら、水面下で実にいやらしく広がっていく、人類にとって戦いにくいウイルスである。

 私の勤務する大阪では、府の入院フォローアップセンターが主導して、COVID-19患者を各病院に割り振っている状況である。自宅やホテル療養中に悪化した患者の入院依頼は昼夜を問わず発生しており、第三波において現場はかなり疲弊している状況である。軽症が少なく中等症をメインで診ている当院では、入院してきた患者のうち、16%が高流量鼻カニュラ酸素療法または気管挿管または死亡に至っている(これら重症化の82%が男性)。

 Go To事業もこの患者増に加担してしまった状況だが、個人的には数カ月ごとに発生するこの波は、行動経済学的に不可避なものではないかと思っている。年末年始以降に一段落する可能性があるが、今後、春先に第四波が来ないことを祈るばかりである。

 2020年12月には毎日のように病床逼迫のニュースが流れた。日本では、本感染症は二類相当の指定感染症扱いになっており、たとえ164万のベッド数を誇る先進国であったとしても、対応可能な病床が限られているという点は確かに1つのハードルではある。とはいえ、これを五類相当にダウンさせると、患者の自己負担が増えるだけでなく、実質保健所のバックアップがなくなるに等しく、水面下での感染コントロールはほぼ不能となる。つらい局面ではあるが、裁量権を活かして自治体が主導してもらいたいと思う。

2. 進むオンライン診療
 コロナ禍で、オンライン診療が急速に普及した印象がある。もちろん直接診察しないと、まともな診療なんて提供できないという意見は根強いし、私も患者の体に触れないと診察した気にならない。下腿浮腫は、触れてみないとpittingかどうかさえ分からない。私のような昭和人間にとって、今後オンライン診療を画一的に進めていく流れにはちょっと反対である。

 ちなみに当院のCOVID-19病棟では、レッドゾーン〔フル装備の個人防護具(PPE)を装着して入る感染エリア〕に入る医療従事者をできるだけ減らすよう配慮されており、病態が落ち着いているCOVID-19患者に対しては、レッドゾーンの内外でオンライン診療を行うことができる(写真)。1年前では、考えられなかった診療スタイルである。ただ、患者の元にタブレットを持って行ったり、レッドゾーンの看護師に通話をサポートしてもらったりしないといけないため、医師の負担軽減策が看護師の負担増加につながらならないよう、配慮する必要があると思う。
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【2021年医学はこうなる】
1. コロナ禍で慢性呼吸器疾患が減る
 既に実感しているところだが、COPDや喘息などの慢性呼吸器疾患の新規診断例が減っている。これはスパイロメトリーの実施件数が減っているからである。たしかにコロナ禍ではやりにくい検査であるが、症状がないのなら、回避すべき検査とまではいえない。どの診療科もそうだろうが、受診閾値自体が上がっており、がんの新規診断例も減っている気がしてならない。

2. SARS-CoV-2ワクチンが導入、懸念される忌避的な意見
 都市のロックダウンは感染者数を減らすには、極めて有効な策だが、跳ね返ってくる経済的ダメージがあまりにも大きい。鎖国を続けても、世界経済が死にゆくだけである。そこで期待されているのは、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)ワクチンである。 マスメディアでは、ワクチンを打てばもうSARS-CoV-2に感染しない・治ると思われている印象があるが、これは間違いである。同じ一本鎖RNAウイルスのインフルエンザでさえも、たとえワクチンを接種しても感染しないことが約束されるわけではない。ワクチン施策は、大きな集団で見たとき、COVID-19を発症する人や重症者を低減することを目標として接種されるものである。アウトカムは、決して接種した個々における効果ではない。

 さて、ここでハードルになるのは、ワクチンに忌避的な意見である。ヒトパピローマウイルス(HPV)ワクチンのときもそうだったが、極めて数が少ない副作用が問題視され、厚生労働省の積極的推奨が見送られた経緯があった。これがSARS-CoV-2ワクチンで起こらないかどうかが鍵だ。

 今回導入されるSARS-CoV-2ワクチンは、新しい機序の核酸ワクチンであり、倦怠感や頭痛などの副作用はこれまでのワクチンよりも少し多くなるかもしれない。「ワクチン=100%安全であるべき」と主張する集団から、大きな反対が出てくることが予想される。

3. パンデミック2年目
 パンデミック2年目の2021年は、SARS-CoV-2の蔓延を収束させることができるかどうか、人類とウイルスの勝負の年になる。これがボクシングの第2ラウンドにすぎないのか、サッカーのアディショナルタイムに入ったのか、現場の人間にとって予想が難しい。感染者数が欧米のようにオーバーシュートすると、COVID-19を診ていない医療従事者も診ざるをえない状況になるかもしれない。






by otowelt | 2020-12-31 08:53 | 感染症全般

近畿中央呼吸器センター 呼吸器内科の 倉原優 と申します。医療従事者の皆様が、患者さんに幸せを還元できるようなブログでありたいと思います。原稿・執筆依頼はメールでお願いします。連絡先:krawelts@yahoo.co.jp


by 倉原優
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