COVID-19:REMAP-CAP試験:重症例に対するIL-6受容体抗体

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 査読前ですが、それなりのジャーナルに投稿されるのではと思います。

・参考記事:COVID-19:EMPACTA試験:トシリズマブは人工呼吸または死亡の複合アウトカムを改善
The REMAP-CAP Investigators.
Interleukin-6 Receptor Antagonists in Critically Ill Patients with Covid-19 – Preliminary report.
medRxiv preprint doi: https://doi.org/10.1101/2021.01.07.21249390.


背景:
 重症COVID-19におけるIL-6受容体抗体の有効性は不明である。

方法:
 進行中の国際多施設共同ランダム化比較試験で、トシリズマブおよびサリルマブについて評価した。ICUで臓器補助を開始してから24時間以内にトシリズマブ(8mg/kg)またはサリルマブ(400mg)または標準治療(コントロール)のいずれかを受けるようにランダム化された。プライマリアウトカムは、院内死亡率と21日目までのorgan support-free daysとした。

※なお、RECOVERY試験後に登録された患者がほとんどであり、全体の93.3%が48時間以内に全身性ステロイドを使用されていた。レムデシビルは32.8%の患者で使用されていた。

結果:
 平均年齢は、トシリズマブ群61.5±12.5歳、サリルマブ群63.4±13.4歳、コントロール群61.1±12.8歳だった。全体の7割以上が男性である。トシリズマブ群のAPACHE IIスコアは13 (8-19) (n=337)、サリルマブ群10 (7-16) (n=42)、コントロール群12 (8-18) (n=381)だった。糖尿病合併率は、トシリズマブ群35.2%、サリルマブ27.1%、コントロール群37.4%だった。
 高流量鼻カニュラ酸素療法を適用されたのは、トシリズマブ群28.6%、サリルマブ群35.4%、コントロール群27.4%だった。NIVは、それぞれ41.6%、47.9%、42.0、侵襲性人工呼吸管理はそれぞれ29.5%、16.7%、30.1%に適用された。P/F比中央値はそれぞれ115 (IQR89-162) 、 126 (IQR99-157) 、118 (IQR89-169) だった。
 トシリズマブとサリルマブは両方とも、事前に規定された有効性を満たした。解析の時点で、353人の患者がトシリズマブ群に割り当てられ、48人がサリルマブ群に割り当てられ、402人がコントロール群に割り当てられていた。organ support-free days中央値は、トシリズマブ群、サリルマブ群、コントロール群でそれぞれ10(OQR-1~16)、11(IQR0~16)、0(IQR -1~15)だった。コントロール群と比較した補正オッズ比中央値は、トシリズマブ群1.64(95%確信区間1.25-2.14)、サリルマブ群1.76(95%確信区間1.17-2.91)だった。院内死亡率は、トシリズマブ群28.0%(98/350)、サリルマブ群22.2%(10/45)、コントロール群35.8%(142/397)だった。
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(organ support-free days:文献より引用)

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(生存:文献より引用)

結論:
 ICUにおいて臓器補助を要するCOVID-19患者に対する、IL-6受容体抗体の有効性を裏付けた。


by otowelt | 2021-01-11 13:02 | 感染症全般

近畿中央呼吸器センター 呼吸器内科の 倉原優 と申します。医療従事者の皆様が、患者さんに幸せを還元できるようなブログでありたいと思います。原稿・執筆依頼はメールでお願いします。連絡先:krawelts@yahoo.co.jp


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