
集団でみると、COPDに対するCO2ナルコーシスこわい説は、そこまでこわくないことが示されました。COPDは全体の4割程度で、背景に有意差はありません。ただ、ARDSレベルになるとさすがに低酸素化を心がけてしまうと、若干死亡率が高くなる気がするので(N Engl J Med 2020; 382:999-1008:ただし有意差はない)、ほどほどが大事なのでしょうか。
背景:
集中治療室(ICU)で急性低酸素性呼吸不全の患者は酸素投与で治療されるが、さまざまな目標酸素化の利点・有害性は不明である。動脈血酸素分圧(PaO2)の目標を低くすると、目標を高くするよりも死亡率が低くなるのではという仮説を立てた。
方法:
この多施設共同研究において、ランダム化から12時間以内にICUに入院し、少なくとも10L/分あるいは閉鎖系で吸入酸素濃度50%の酸素投与を受けた2928人の急性呼吸不全患者が登録された。目標PaO2は、低酸素化群60 mm Hg、高酸素化群90 mm Hgとした。プライマリアウトカムは90日以内の死亡率とした。
結果:
低酸素化群1441人中618人(42.9%)、高酸素化群1447人中613人(42.4%)が死亡した(補正リスク比1.02; 95%信頼区間0.94 〜1.11; P = 0.64)。90日時点で、患者が生命維持装置なしで生存していた日数の割合、または退院後の生存日数の割合に有意差はなかった。ショック、心筋虚血、虚血性脳卒中、腸管虚血の新たなエピソードがあった患者の割合も、同等だった(P = 0.24)。
結論:
ICUにおける急性低酸素性呼吸不全の成人患者では、酸素化の目標を低くしても、90日死亡率は低下しなかった。