
ICU入室時点では抗凝固療法が手遅れになっていた、、、という可能性も残ってはいますが。
Al-Samkari H, et al.
Thrombosis, Bleeding, and the Observational Effect of Early Therapeutic Anticoagulation on Survival in Critically Ill Patients With COVID-19.
Ann Intern Med . 2021 Jan 26. doi: 10.7326/M20-6739.
背景:
過凝固は、COVID-19患者の主要な死因かもしれない。
目的:
COVID-19の重症患者における静脈血栓塞栓症(VTE)と大出血の発生率を評価し、生存に対する早期抗凝固療法(エノキサパリン40 mgを1日1回皮下投与、または同等の未分画ヘパリン5000単位を1日2〜3回皮下投与など)の効果を調べること。
試験デザイン:
COVID-19の重症成人患者3239人を対象とした多施設コホート研究で、集中治療室(ICU)入室後14日以内のVTEと大出血の発生率を評価した。ICU入室の初期2日間に抗凝固療法を受けたか・受けなかったかによって患者を層別化し、生存に対する早期抗凝固療法の効果を調べた。交絡因子を補正するため、逆確率重み付けを使用したCoxモデルが使用された。
場所:
アメリカの67施設。
参加者:
登録されたICUに入院したCOVID-19成人患者。
アウトカム:
死亡までの期間、退院、または最終追跡日。
結果:
登録された3239人の患者の年齢中央値は61歳(IQR 53-71歳)、2088人(64.5%)が男性だった。ほとんどの患者は未分画ヘパリン(62.6%)または低分子量ヘパリン(34.4%)を投与され、少数が直接トロンビン阻害剤および他の薬剤を投与されていた。
204人(6.3%)がVTEを発症し、90人(2.8%)が大出血イベントを発症した。VTEの独立予測因子は、男性、ICU入室時のD-dimer高値だった。
追跡期間中央値27日(IQR 15-35日)において、2809人のうち1066人(38.0%)が死亡した。プライマリ解析では、早期抗凝固療法を受けた患者の死亡リスクは、受けていない患者と同等だった(ハザード比1.12、95%信頼区間0.92-1.35)。
(Kaplan-Meier曲線:文献から引用)

Limitation:
観察研究であること。
結論:
COVID-19の重症成人患者において、早期抗凝固療法はtarget trial emulationにおいて生存に影響しなかった。
※target trial emulation:複数の観察研究値をもとに介入試験を模倣する手法。