侵襲性アスペルギルス症に対するポサコナゾールとボリコナゾールの比較
2021年 02月 08日
ノクサフィルはまだ肺アスペルギルス症に保険適応がありませんが、いずれ使えるようになると思います。点滴は今のところ中心静脈カテーテルからの投与という条件付きです。
効能・効果
○造血幹細胞移植患者又は好中球減少が予測される血液悪性腫瘍患者における深在性真菌症の予防
○下記の真菌症の治療
フサリウム症、ムーコル症、コクシジオイデス症、クロモブラストミコーシス、菌腫
それにしてもSECURE試験と同じ筆頭著者とは・・・。
Posaconazole versus voriconazole for primary treatment of invasive aspergillosis: a phase 3, randomised, controlled, non-inferiority trial.
Lancet, DOI: https://doi.org/10.1016/S0140-6736(21)00219-1.
背景:
ボリコナゾールは、侵襲性アスペルギルス症の患者の一次治療として推奨されている。全身性の吸収が改善されたポサコナゾールの静脈内および錠剤は、ボリコナゾールの効果的代替となる可能性がある。侵襲性アスペルギルス症の一次治療のために、ボリコナゾールに対するポサコナゾールの非劣性を評価することを目的とした。
方法:
ポサコナゾール(静脈内または経口ポサコナゾール300mgを1日目に2回、その後300 mgを1日1回、2〜84日)とボリコナゾール(静脈内ボリコナゾール6 mg/kgを1日目に2回、その後4mg/kgを1日2回あるいは経口ボリコナゾールを300mg1日目に2回、その後200mg1日2回、2~84日)を比較したランダム化前向き二重盲検ダブルダミー試験を実施した。参加者は、26ヶ国・91施設から登録された13歳以上、体重40kg以上で、診断基準に応じて登録された。プライマリアウトカムはITT集団(1回以上の治験薬を投与された参加者)における42日目までの累積総死亡率であり、10%の非劣性マージンが設定された。同集団において安全性も解析された。
結果:
2013年10月25日~2019年9月10日までの間、653人のうち575人のITT参加者がランダム化され、1回以上の治験薬を投与された(ポサコナゾール群288人、ボリコナゾール群287人)。 42日目までの死亡率は、ポサコナゾール群で15%(44/288)、ボリコナゾール群で21%(59/287)だった(治療差-5.3%、95%信頼区間-11.6~1.0 ; p <0.0001)。FAS解析(proven or probable)の42日目までの死亡率も、非劣性だった(19% vs 19%, 治療差0.3%、95%信頼区間-8.2~8.8)。最もよく報告された治療関連有害事象(発生率> 3%)は、ポサコナゾール群ではAST・ALT上昇、悪心、低カリウム血症、嘔吐がみられ、ボリコナゾール群ではAST・ALT上昇、ALP上昇、幻覚、γGTP上昇、悪心、視力障害が多くみられた。ITT集団における治療関連有害事象発生率は、ポサコナゾールで30%、ボリコナゾールで40%だった(治療差-10.2%, 95%信頼区間-17.9~-2.4)。
結論:
侵襲性アスペルギルス症の一次治療におけるポサコナゾールは、総死亡率のアウトカムに対してボリコナゾールに非劣性だった。ポサコナゾールは忍容性が高く、ボリコナゾール群よりも治療関連有害事象が少なかった。 この研究により、同症に対する第一選択薬としてポサコナゾールの使用を支持する。
by otowelt
| 2021-02-08 00:51
| 感染症全般