肺Mycobacterium abscessus症に対する吸入アミカシン含有レジメンの有効性

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 ひとまず、アリケイスが現場に登場することが第一歩となります(ただし、承認される適応菌種はMAC)。ところで、サムスンメディカルセンターって約2000床あるんですよ!



背景:
 肺Mycobacterium abscessus症 (MABS-PD)は、抗菌薬不応性であるため効果的な治療法が望まれる。

リサーチクエスチョン:
 吸入アミカシンを含む多剤併用レジメンで治療された未治療MABS-PD患者のアウトカムは?

試験デザインおよび方法:
 われわれは、吸入アミカシンを含む多剤併用レジメン(±クロファジミン)で新規治療された82人のMABS-PD患者を前向き観察コホートに登録した(サムスンメディカルセンター:2015年3月~2018年6月、ATS/IDSA基準を採用、AdvanSureTM Mycobacteria GenoBlot Assay)。初期強化治療の間、静注アミカシン(20mg/kg/day)、静注イミペネム(750mg1日3回)(あるいはセフォキシチン)、経口アジスロマイシン(250mg/day))が全例に用いられた。経口クロファジミン(100mg/day)は、(i) M. abscessus subspecies abscessusあるいは(ii)空洞を有するM. abscessus subspecies massilienseに加えられた。維持期治療の間、アミカシンは静注から吸入へ切り替えられた。アジスロマイシン±クロファジミンは外来でも継続された。
 喀痰検査は、治療開始から1,3,6ヶ月目に実施し、その後は2~3ヶ月おきに実施した。クラリスロマイシン(3~14日目)のMICが≦2のとき感受性、3日目でMIC ≧8のとき耐性、3日目感受性・14日目耐性の場合誘導耐性と判定した。

結果:
 82人のうち、46人(56%)が M. massiliense-PDと36人(44%)がM. abscessus-PDだった。59人(72%)は結節気管支拡張型、そのうち23人は空洞を有していた。23人(28%)が線維空洞型だった。治療開始から12ヶ月時点で、53人(65%)が治癒と判定された。 M. massiliense-PD患者46人中42人 (91%)、M. abscessus-PD患者36人中11人(31%)と、前菌種のほうが効果的だった(p<0.001)。症状改善は72人(88%)、放射線学的改善は64人(78%)にみられ、M. massiliense-PDのほうが良好だった(96% vs 78%, p=0.047; 93% vs 61%, p=0.002)。

※治癒(cure):Cure was defined as fulfillment of both clinical and microbiological cure. Microbiological cure was defined as multiple consecutive negative cultures of causative species after culture conversion until the time of outcome measurement. Culture conversion was defined as three consecutive negative cultures after treatment (at least 4 weeks apart).
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(アウトカム:文献より引用)

結論:
 吸入アミカシン(±クロファジミン)を含む多剤併用レジメンは、M. massiliense-PDで良好な治療アウトカムである。しかしながら、M. abscessus-PDについてはさらに効果的な治療法が望まれる。






by otowelt | 2021-02-27 00:23 | 抗酸菌感染症

近畿中央呼吸器センター 呼吸器内科の 倉原優 と申します。医療従事者の皆様が、患者さんに幸せを還元できるようなブログでありたいと思います。原稿・執筆依頼はメールでお願いします。連絡先:krawelts@yahoo.co.jp


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