ガレクチン-3は、線維性肺疾患でもよく研究されたバイオマーカーです。ガレクチン欠損マウスでは、全身に線維症を起こすことが分かっています(Am J Pathol . 2008 Feb;172(2):288-98.、Proc Natl Acad Sci U S A . 2006 Mar 28;103(13):5060-5)。また炎症性疾患や慢性心不全でもよく研究されています(Eur Heart J . 2012 Sep;33(18):2290-6.)。
―――しかし、COPDにおけるガレクチン-3の有効性はどうやら潰えたようです。
- 概要:
■糖結合タンパクであるガレクチン-3は、一部の炎症性疾患で増加し、近年慢性閉塞性肺疾患(COPD)の全身性バイオマーカーとして報告されている。スウェーデンのイェーテボリ大学の縦断的研究において、安定期COPD~COPD増悪の病歴がある喫煙者の血液検査によりガレクチン-3を調べた。
■研究の対象集団は、慢性気管支炎型COPDの長期喫煙者56人、肺疾患のない長期喫煙者10人、臨床的に健康な非喫煙者10人で構成された。ガレクチン-3、白血球、CRPが調べられ、さらに喀痰検体の細菌についても解析した。
■慢性気管支炎型COPD患者において、増悪中にCRP、白血球数、好中球数、ガレクチン-3が上昇することが分かった。ただ、ガレクチン-3の上昇は顕著ではなかった。
【一口メモ】慢性気管支炎型
原因不明の咳や痰が1年のうちに3ヶ月以上持続し、なおかつそれが2年以上続いているCOPDの表現型
■安定期のCOPDにおいては、非COPDの喫煙者・健常者と比較してガレクチン-3は有意に上昇していなかった。また、安定期でも増悪期でも、喀痰中の細菌増殖が増えてもガレクチン-3値には変化がなかった。ガレクチン-3とは対照的に、CRP、白血球数、好中球数は、慢性気管支炎型COPD群で、非COPDの喫煙者・健常者よりも有意に上昇していた。
■血清ガレクチン-3は、慢性気管支炎型COPDの増悪時に、再現性はあるもののわずかな上昇をもたらす。ガレクチン-3が現状、臨床的に有用なバイオマーカーになる可能性は低い。
ガレクチンはそこまで有名なバイオマーカーではありませんが、中途半端だった位置づけがはっきりするのはよいことだと思います。COPDの診療においてはそこまでバイオマーカーに頼ることは多くないですね。