悪性胸水における息切れは生存率を低下

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個人的にも、呼吸困難の評価としてはNRSやVASが一番使いやすいレーティングだと思います。悪性胸水における息切れは、純粋に胸水のみを反映しているものも多いですが、リンパ管症や肺内転移などのアウトカム不良因子と関連していることもあります。当院の呼吸困難の評価には、緩和ケアチームでNRS、リハビリテーションや6分間歩行試験で修正Borgスケール、といった使い分けがあります。



概要:
■悪性胸水(malignant pleural effusions:MPE)の患者は、息切れと生存率の低下を経験する。息切れは、他の病態においても、生存率の低下と関連している。

■MPEに対して医療的な介入を受けている553人の患者の5ランダム化比較試験からの個々の患者データが分析さた。VASD(visual analogue scale for dyspnoea)は、ベースライン時と介入後の毎日記録された。

【一口メモ】VASD(visual analogue scale for dyspnoea)
100mmの線を引き、0mmを息切れがまったくない、100mmを考えられる限り最悪の息切れ、として患者さんにマーキングしてもらう評価法。数値が高いほど呼吸困難が強く、MCIDは19mmとされている。
Mishra EK, et al. Defining the minimal important difference for the visual analogue scale assessing dyspnea in patients with malignant pleural effusions. PLoS One. 2015;10(4):e0123798.

■死亡または試験終了まで追跡された。単変量・多変数Cox回帰を使用して、生存に関連する因子を特定した。

■ベースラインVASDは、生存率の低下と有意に関連しており、VASDの10mm増加に対するハザード比は1.10(95%信頼区間1.06-1.15)だった。多変量回帰においても、生存の重要な予測因子だった。平均7日間VASDおよび平均総VASDも生存の予測因子だった(平均7日VASD:ハザード比1.26、95%信頼区間1.19-1.34、総VASD:ハザード比1.25、95%信頼区間1.15-1.37)

■生存に関する他の予測因子として、血清CRPおよび腫瘍組織型が挙げられた。化学療法、PS、胸水LDH、血清アルブミン、ヘモグロビン、血清好中球/リンパ球比、胸水の多さは、単変量で生存と関連していたが多変量解析では明らかではなかった。
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(VASD増加:文献より引用)


以上から、ベースライン時および介入後のVASDを使用して測定された息切れは、MPE患者の生存の予測因子と考えられます。上述したように、NRSやVASが臨床的に使いやすいと思います。30mmを超えてくるとさすがにイベントの頻度が高くなってくるので注意が必要です。






by otowelt | 2021-03-25 00:49 | 肺癌・その他腫瘍

近畿中央呼吸器センター 呼吸器内科の 倉原優 と申します。医療従事者の皆様が、患者さんに幸せを還元できるようなブログでありたいと思います。原稿・執筆依頼はメールでお願いします。連絡先:krawelts@yahoo.co.jp


by 倉原優
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