PD-L1高発現の肺腺癌に対する第1世代EGFR-TKI

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オシメルチニブは、第1世代EGFR-TKIにおいてPFSとOSの延長が期待される薬剤で、脳転移にも有効とされています。FLAURA試験では、PD-L1陽性(TPS≧1%)の症例とそれ以下の症例を比較してPFSは同等だったと報告されていますが(J Thorac Oncol . 2020 Jan;15(1):138-143.)、高発現だった3.6%の患者では個々のアウトカムが報告されていません。ゆえに、PD-L1高発現の腫瘍に対する有効性はまだ議論の余地があります。



概要:
■EGFR-TKIに対する反応不良を予測バイオマーカーが現在研究されている。

■多施設共同後ろ向き研究において、PD-L1 TPSが第1世代EGFR-TKI治療アウトカムに影響を及ぼすかどうか調べた。

■オーストラリアの5つの都市型病院において、感受性EGFR変異を有する病期IIIB/IV期の肺腺癌の患者が登録された。1次治療としてEGFR-TKIで治療されたものを対象とした。PD-L1 TPSは、Ventana抗PD-L1(SP263)アッセイを使用して決定された。 PD-L1の「高発現」は、TPS≥50%と定義された。病勢進行と死亡のリスク因子は、Cox回帰を使用して解析した。

■合計186人の患者が登録された(男性34 %、ECOG PSは約半数が0)。平均年齢は67歳で、66%が女性、54%がアジア人だった。PD-L1発現が高い患者(n = 23; 12%)は、PFS(6.6 vs 13.0ヶ月、ハザード比HR2.6、95%信頼区間1.6-4.2、p <0.0001)およびOS(11.5 vs 32.9ヶ月ハザード比3.3、95%信頼区間1.9-5.7、p <0.0001)がPD-L1の低発現・非発現の集団よりも短かった。ベースラインに脳転移がある46人では、頭蓋内病勢進行までの期間は、高発現群のほうが有意に短かった(8.7 vs 24.3ヶ月、ハザード比2.9, 95 %信頼区間1.1–7.7, p = 0.03)。これらの結果は、多変量解析でも同様だった。

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. PFS(文献より引用)

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. OS(文献より引用)

T790M変異の頻度は、PD-L1低発現/陰性群で84人中50人(60%)、高発現群6人中4人(67%)だった。



以上のことから、EGFR遺伝子変異がある肺腺癌患者さんにおいて、PD-L1が高発現の場合、第1世代EGFR-TKIに対する早期耐性化と生存期間の短縮に関連していると言えそうです。




by otowelt | 2021-04-05 00:49 | 肺癌・その他腫瘍

近畿中央呼吸器センター 呼吸器内科の 倉原優 と申します。医療従事者の皆様が、患者さんに幸せを還元できるようなブログでありたいと思います。原稿・執筆依頼はメールでお願いします。連絡先:krawelts@yahoo.co.jp


by 倉原優
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