経胸壁針生検は胸腔内再発率を高める

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癌細胞が胸腔内にインプラントされてしまうという懸念はずっと前からあり(Eur J Cardiothorac Surg. 2003 May;23(5):828-32.)、全体的には非常にまれな現象ではあるものの、IPDメタアナリシスではちょっと雲行きが怪しそうです。悪性胸水に対する胸腔穿刺やドレナージでも、時に胸壁にインプランテーションされてしまうことがあり、個人的にも上皮型悪性胸膜中皮腫が胸腔ドレーンの「穴」から外に向かって出てきた経験があります(1~2年くらいかけてじわじわと)。




概要:
■術前の経胸壁針生検が早期肺癌の胸膜再発のリスクを高めるかどうかは、相反する結果が存在する。経胸壁針生検後の病期I肺癌における胸膜再発リスクを評価するために、システマティックレビューおよびIPDメタアナリシスをおこなった。

■OVID-MEDLINE、Embase、Cochraneデータベースのシステマティックレビューがおこなわれた。適格な研究は、経胸腔生検後のステージI肺癌における胸膜再発のリスクに関する原著論文である。論文に言語の規定はもうけなかった。プライマリアウトカムは片側胸腔の肺癌再発(悪性胸水発症、多発性肺内陰影増大[PET高集積も可])とした。

■IPDデータを入手するため、適格な研究のオーサーに連絡した。再発までの時間と肺癌特異的生存にはFine-Grayモデル(部分分布ハザードに対する比例ハザードモデル)を使用し、全生存にはCox比例ハザードモデルを使用した。

■10件の適格研究のうち6件2394人のIPDデータを分析した。他の診断手技と比較して、経胸壁針生検は同側胸腔再発リスクが高かった。胸腔単独の再発で部分分布ハザード比2.58(95%信頼区間1.15〜5.78)、他転移と同時発症で部分分布ハザード比1.99(95%信頼区間1.14~3.48)となった。診断手技と年齢層の間の交互作用を考慮したセカンダリアウトカム分析では、再発までの期間の短縮(部分分布ハザード比2.01、95%信頼区間1.11~3.64)、肺癌特異的生存の短縮(部分分布ハザード比2.53; 95%信頼区間1.06~6.05)、全生存期間の短縮(ハザード比2.08; 95%信頼区間1.12〜3.87)が、55歳未満の患者で観察された、他の年齢層ではそのような関連は観察されなかった。高齢者層ではこれらの因子の影響は一定していなかった。



このIPDメタアナリシスによると、55歳未満の若年層に対する経胸壁針生検は胸腔内再発リスクを少し上昇させるようです。6~8年くらいかけてプラトーに達しているようですが、明確な再発率の差があります。かといって、再発リスクが高いということで生検をすべからく避けよとは思いませんので、手術に対するベネフィットと天秤にかけるべきと思います。




by otowelt | 2021-04-28 00:50 | 肺癌・その他腫瘍

近畿中央呼吸器センター 呼吸器内科の 倉原優 と申します。医療従事者の皆様が、患者さんに幸せを還元できるようなブログでありたいと思います。原稿・執筆依頼はメールでお願いします。連絡先:krawelts@yahoo.co.jp


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