COVID-19:クライオバイオプシーによる組織学的評価

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 COVID-19の肺組織については、剖検例の論文がいくつか出ています(N Engl J Med . 2020 Jul 9;383(2):120-128.、Emerg Infect Dis . 2020 Sep;26(9):2157-2161.)。基本的にはARDSにいたるため、びまん性肺胞傷害(DAD)と考えられていますが・・・。

■参考ウェブサイト:COVID-19剖検例の解析と病理組織像 (IASR Vol. 41 p118-119: 2020年7月号)(URL:https://www.niid.go.jp/niid/ja/typhi-m/iasr-reference/2523-related-articles/related-articles-485/9766-485r10.html

 まさかのクライオバイオプシー12例という、驚くべき報告がありました。COVID-19確定例でクライオバイオプシーをおこなうのは、かなり勇気が要ると思いますが、よく同意が取れたなあと感心すらします。


概要:
■COVID-19の間質性肺炎にいたる病原性の各々の段階については、まだよくわかっていない。これまでの剖検については、最も関連性のある組織学的所見はびまん性肺胞傷害(DAD)であることが分かっている。しかし、死亡前に生検することで、疾患のより正確なデータが提供され、治療アプローチに役立つかもしれない。

■この研究では、中等症COVID-19肺炎患者から得られた肺組織検体の形態学的および免疫組織化学的特徴を調べた。対象となったのは、症状発症から20日以内の12人である。

■組織病理学的変化として、II型肺胞上皮細胞過形成を伴う急性肺傷害が確認されたものの、肺胞出血、肉芽腫形成、硝子膜形成のエビデンスははっきりしなかった。組織では、リン酸化STAT3の強い核内発現がII型肺胞上皮細胞の> 50%で観察された。アポトーシス小体は明らかでなかった。

■肺胞間毛細血管は内腔拡大を示し、部分的に重なり合い列になっていた。肺細静脈には、内腔の拡大、壁肥厚、血管周囲のCD4陽性T細胞浸潤がみられた。リン酸化STAT3の強い核内発現が、細静脈・間質の毛細血管の内皮細胞において観察された。肺胞マクロファージは、特定の表現型を示していた(CD68、CD11c、CD14、CD205、CD206、CD123 / IL3AR、PD-L1陽性)。

COVID-19によるウイルス性肺炎は、典型的なARDSの病理学的経過とは言いにくいようです。形態学的・組織学的にはII型肺胞上皮細胞過形成が目立ちますが、硝子膜形成は観察されませんでした。血管内皮傷害が血栓塞栓症の増加を招いているのでは、という見解もありますね。



by otowelt | 2021-03-18 00:25 | 感染症全般

近畿中央呼吸器センター 呼吸器内科の 倉原優 と申します。医療従事者の皆様が、患者さんに幸せを還元できるようなブログでありたいと思います。原稿・執筆依頼はメールでお願いします。連絡先:krawelts@yahoo.co.jp


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