COVID-19:各国医療機関における新型コロナワクチンの有効性

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個人的に「新型コロナワクチン」という書き方はあまり好きではないのですが、厚労省に合わせてこう記載させていただきます。

mRNAワクチンの第3相臨床試験のデータでは、症候性SARS-CoV-2感染の予防効果は、モデルナのmRNA-1273ワクチンは2回目投与から14日後に94.1%、ファイザーのBNT162b2ワクチンは2回目投与から7日後に95%という効果が示されています。新型コロナワクチンの有効性は高く、当初結構びっくりする水準でした(逆にあのデータを見て、ワクチンに懸念を示す医師が多い現状にも驚きました)。変異株に対する予防効果の低減は懸念事項ではありますが、全体としては全く接種をためらうほどではないと思われます。

さて、NEJMに医療従事者に対する新型コロナワクチンの報告がありました。


  • 概要
■1つ目は、カリフォルニア大学のサンディエゴ・ロセンザルスの2校の大学病院における報告です。2020年12月16日に医療従事者へのワクチン接種を開始しています。いずれの大学病院においても、検査奨励プログラムによって、ワクチン接種後の無症候性SARS-CoV-2感染の検出率を向上させています。これら両大学病院からプールされたデータが、解析されました。

■2020年12月16日~2021年2月9日に、3万6659人の医療従事者が1回目のワクチンを接種され、2万8184人(77%)が2回目のワクチンを接種されました。ワクチンを接種された医療従事者のうち、接種後翌日以降SARS-CoV-2陽性反応が観察されたのは379人でした。このうちの71%は1回目接種から2週間以内の陽性でした。2回目のワクチン接種を受けた医療従事者のうち37人が陽性となり、これも22人は2回目接種後1~7日で陽性が確認されました。2回目のワクチン接種から8~14日後に陽性が確認された医療従事者は8人のみで、15日以上後に陽性が確認された医療従事者は7人でした。

■2021年2月9日時点で、サンディエゴ校では5455人、ロセンゼルス校では9535人の医療従事者が2回目のワクチン接種を2週間以上前に受けており、計算すると陽性率は0.05%に相当することになります。

■ワクチン接種後にSARS-CoV-2が陽性になる絶対リスクは、サンディエゴ校の医療従事者で1.19%、ロセンゼルス校の医療従事者では0.97%でした。これらの数値は、モデルナ・ファイザーの臨床試験で報告された数値よりは高いものでしたが、無症状の人であっても定期的検査を可能にしたことと、ワクチン接種キャンペーン中に南カリフォルニアで感染者が急増したことなどが理由として考えられています。

■2回目の接種から14日後に陽性反応が観察されることはまれで、両ワクチンの有効性が臨床試験外でも維持されていることを示しています。



  • 概要
■テキサス州の指示による、ワクチンの第1a相試験を行ったテキサス大学サウスウェスタン・メディカルセンターの従事者対象プログラムのデータです。なお、ワクチン接種キャンペーンを開始した時期は、テキサス州北部でSARS-CoV-2の新規感染者数が急増した時期と重なっています。この感染拡大によって、ニュースでも報道されていたように、病床は逼迫することになりました。

■ワクチン接種キャンペーンの初期31日間で、同従事者2万3234人の59%がいずれかのmRNAワクチンの1回目接種を受け、30%が2回目接種を受けました。2020年12月15日~2021年1月28日で、ワクチン接種が適用された医療従事者23234人のうち、350人(1.5%)が新規にSARS-CoV-2に感染しました。感染した従事者の割合はワクチン接種状況によって異なり、ワクチン未接種の従業員8969人のうち234人(2.61%; 95%信頼区間2.29-2.96)、まだ部分的にしかワクチンを接種していない従事者6144人のうち112人(1.82%; 95%信頼区間1.50-2.19)、完全に2回のワクチンを接種した従事者8121人のうち4人(0.05%; 95%信頼区間0.01-0.13)に感染が確認されました(ペアワイズ比較でP< 0.01)。

■2021年1月9日以降、テキサス大学サウスウェスタン・メディカルセンター全職員における実際のPCR陽性数は、同時期に救急外来を受診しPCR検査を受けた患者の同陽性率よりも、一貫して低い数値でした。

■ワクチン接種による従事者に対する感染予防効果は大きかった。COVID-19により隔離された従事者が90%超減少したことが確認されました。リアルワールドのワクチン接種キャンペーンは、医療従事者の感染率を著しく減少させ、これによりマンパワー確保が可能となりました。





■エルサレムにある、職員6680人を抱えるハダサ・ヘブライ大学医療センターの医療従事者を対象にワクチンの有効性を調査しました。エルサレムはイスラエルの中でもCOVID-19の罹患率が高い都市の1つです。通常業務に加えて、8つの専用病棟でCOVID-19を診療しています。

ハダサ・ヘブライ大学医療センター:
医師数800人以上、1000床の規模で、都市部の大学病院とほぼ同等の水準。
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(ハダサ・ヘブライ大学医療センター:Wikipediaより)

■流行開始から2021年1月31日までに、医療従事者6680人のうち689人(10.3%)が感染しましたが、そのほとんどが地域社会でのウイルス曝露によるもの(市中感染)でした。医療従事者の発生率の傾向はエルサレムにおける人口集団と同様でした。

■2020年12月20日から、21日間隔で2回接種するファイザー社ワクチンの接種プログラムが開始されました。8週間以内に、12月20日まで過去感染歴がない医療従事者6252人のうち5297人(84.7%)がワクチンを接種しました。1回目ワクチン接種の後、21日目までに感染していなかった医療従事者のほとんど(98.9%)が2回目のワクチンを接種しました。

■ワクチンを接種した医療従事者において、1回目接種以降の週次COVID-19発生率は、2週目以降顕著に減少していることが分かりました。発生率はその後も減少し、4週目以降は低い水準で推移しました。

■2020年9月以降、COVID-19に感染していない職員の割合は、2回目の接種開始までは徐々に低下していましたが(=感染が増えていた)、ワクチン接種後の医療従事者の感染はそれから減少し、グラフでもワクチン接種ステータスによって明確な差が観察されています。




私の病院では2回目の接種が始まりますが、過去の臨床試験で報告されているようにプラセボよりも発熱が多いことが懸念の1つとなっています。「37.5℃以上は休むこと」のように職場で規定があると、たくさんの休職者が出るかもしれないので、適宜NSAIDsやアセトアミノフェンなどを内服してもらうのも手だと思います。

日経メディカルオンラインで「ワクチン接種に備えて解熱鎮痛薬を服用すべき?」というコラムを書いています。参照してください。


世界保健機関(WHO)は、「解熱鎮痛薬の使用はワクチン接種前またはワクチン接種時に推奨されないが、ワクチン接種後副反応がある場合は認められる」と明言しており、米疾病対策センター(CDC)もこれについて同意しています(CDC. General Best Practice Guidelines for Immunization: Best Practices Guidance of the Advisory Committee on Immunization Practices (ACIP).)。




by otowelt | 2021-03-28 22:07 | 感染症全般

近畿中央呼吸器センター 呼吸器内科の 倉原優 と申します。医療従事者の皆様が、患者さんに幸せを還元できるようなブログでありたいと思います。原稿・執筆依頼はメールでお願いします。連絡先:krawelts@yahoo.co.jp


by 倉原優