REPLACE試験:PAHにおけるホスホジエステラーゼ5阻害剤からリオシグアトへの切り替え

アデムパスは可溶性グアニル酸シクラーゼ(sGC)刺激薬で、慢性血栓塞栓性肺高血圧症(CTEPH)の治療薬としてよく使用されている薬剤です。sGCは心肺系にみられる酵素で、一酸化窒素(NO)の受容体です。これがsGCと結合するとcGMPの合成が促進されます。

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. リオシグアトの化学構造式

肺血管の細胞増殖や血管収縮を亢進させるエンドセリンの増加、血管の細胞増殖の抑制や血管拡張作用をもつNOやプロスタグランジンI2の減少による、血管の収縮と血管細胞の異常増殖が肺高血圧症の原因と考えられています。そのため、エンドセリン受容体拮抗薬、ホスホジエステラーゼ5阻害剤・sGC刺激薬、プロスタグランジンI2製剤といった主に3経路の戦略が有効と考えられます。

紹介するのは、肺動脈性肺高血圧症(PAH)におけるNO経路を通した薬剤のうち、ホスホジエステラーゼ5阻害剤の継続と、リオシグアトにスイッチした場合の差をみたREPLACE試験についてです。



  • 概要
■リオシグアトはホスホジエステラーゼ5阻害剤による治療に充分反応しないPAH患者に対する代替選択肢となる可能性があるが、スイッチングするメリットがあるのかどうかはよくわかっていない。このREPLACE試験の目的は、1年死亡のリスクが中程度のPAH患者を対象に、ホスホジエステラーゼ5阻害剤を継続するか、リオシグアトにスイッチするかを比較検討することである。

■REPLACE試験は、22ヶ国81病院の肺高血圧症センターでおこなわれた非盲検ランダム化比較試験である。1年死亡のリスクが中程度の症候性PAH患者(18〜75歳)を登録した。ランダム化の前に少なくとも6週間、エンドセリン受容体拮抗薬の併用の有無を問わず、ホスホジエステラーゼ5阻害剤による治療を受けている患者を対象とした。過去にリオシグアトで治療された患者、ランダム化前30日以内にプロスタサイクリン系薬剤を使用した患者、左心疾患のある患者、臨床的に肺機能障害(拘束性・閉塞性)のある患者は除外された。

■患者は、ホスホジエステラーゼ5阻害剤治療(経口シルデナフィル[≧60mg/日]または経口タダラフィル[20-40mg /日]; ホスホジエステラーゼ5阻害剤群)を継続するか、経口リオシグアト(最大2.5mg/day:リオシグアト群)に切り替えるようにランダムに1:1に割りつけられた。

■主要評価項目は、24週目までの臨床的改善とした。

臨床的改善(clinical improvement):
臨床的悪化がなく、3つの変数(6分間歩行距離、WHO機能分類、NT-ProBNP)のうち少なくとも2つに改善がみられること。

■ベースラインおよび24週目に詳細な観察をおこない、治験薬を少なくとも1回投与された全患者ITT集団で解析された。副次的評価項目には、臨床的悪化イベントが含まれた。

■2017年1月11日から2019年7月31日までの間に、293人の患者がスクリーニングされ、そのうち226人の患者がリオシグアト群(n = 111)またはホスホジエステラーゼ5阻害剤群(n = 115)にランダムに割りつけられた。211人の患者が試験を完遂し、14人の患者が中断した(各郡7人)。 ホスホジエステラーゼ5阻害剤群の1人は治療を受けなかったため、225人の患者が安全性分析に含まれた。また、ホスホジエステラーゼ5阻害剤群の1人の患者は、ベースラインで複合主要エンドポイント測定が欠損しており、224人の患者が解析された。

■主要評価項目は、リオシグアト群111人のうち45人(41%)、ホスホジエステラーゼ5阻害剤群113人のうち23人(20%)で満たされた(オッズ比2.78、95%信頼区間1.53-5.06; p = 0.0007)。臨床的悪化イベントは、リオシグアト群111人の1人(1%)(PAHの悪化による入院)およびホスホジエステラーゼ5阻害剤群114人の10人(9%)(PAHの悪化による入院9人;病勢進行1人)で発生した(オッズ比0.10、95%信頼区間0.01-0.73]; p = 0.0047)。

■頻度が高かった有害事象は、リオシグアト群の低血圧(15人[14%])、頭痛(14人[13%])、消化不良(10人[9%])、ホスホジエステラーゼ5阻害剤群の頭痛(8人[7%])、咳(7人[6%])、上気道感染症(7人[6%])だった。重篤な有害事象は、リオシグアト群111人の患者のうち8人(7%)、ホスホジエステラーゼ5阻害剤群114人の患者のうち19人(17%)で報告された。ホスホジエステラーゼ5阻害剤群で4人の患者が死亡し、そのうちの1人は安全性追跡期間中に死亡した。



以上から、ホスホジエステラーゼ5阻害剤からsGC刺激薬へスイッチすることは、1年死亡リスクが中程度の患者さんに対して良い選択肢になる可能性が高そうです。





by otowelt | 2021-05-01 00:52 | 呼吸器その他

近畿中央呼吸器センター 呼吸器内科の 倉原優 と申します。医療従事者の皆様が、患者さんに幸せを還元できるようなブログでありたいと思います。原稿・執筆依頼はメールでお願いします。連絡先:krawelts@yahoo.co.jp


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