肺Mammomonogamus症

アジアでもちらほら報告例がありますが、基本的にカリブ海周辺で観察される咳嗽の原因となる線虫です(J Clin Microbiol 1995; 33: 998–1000.、Biomed Rev Inst Nac Salud 2006; 26: 337–341、Vet Parasitol 2005; 130: 241–243.)。1つの単語の中に「m」が5つもある!!

私自身、寄生虫疾患自体をほとんど診たことがないので、当然ながら本症も診たことがありません。

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. Mammomonogamus laryngeus(Wikipediaより)



Mammomonogamus・Syngamusは熱帯環境でよくみられる線虫である。寄生虫はウシ、ヤギ、ヒツジなどの動物の気道に寄生するが、ヒトへの侵入はきわめてまれである。

■気道における同感染による咳嗽は過去に100例以上が記録されているが、ほとんどがカリブ海周辺のものである。

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. カリブ海

■この後ろ向きの記述研究の目的は、Mammomonogamus患者の臨床的・生物学的・放射線学的特徴を報告することである。

■2008年1月1日~2020年8月31日まで、マルティニーク教育病院の呼吸器科の記録からMammomonogamus症患者が特定された。患者は気管支線維鏡検査を受け、気管支内にMammomonogamus laryngeusの虫体が観察された。合計12人が登録され、そのうち10人が女性だった。平均年齢は36±13歳だった。

■もっともよくみられた症状は乾性咳嗽であり、ときに喀血を合併していた。診断までの症状期間にはばらつきがあり、10日から6ヶ月以上までと様々だった。1人の患者は嘔吐や体重減少などの消化器症状も有していた。また、発熱が続く患者もいた。胸部画像では、3人の患者が肺の浸潤影を示したものの、それ以外の患者では正常だった。2人の患者は血中好酸球増加症を示した。虫体は、通常一対が絡み合っているため、気管支内視鏡の際、鉗子で摘出された。

■全患者は、アルベンダゾールを10日間、またはイベルメクチンを15日間投与された。治療後、再発した患者はいなかった。


イベルメクチンってそういえば、抗寄生虫薬だった。COVID-19で取り上げられて、ちまたには抗ウイルス薬だと勘違いされていそう。

肺だけでなく消化器系にも侵入することがわかっており、腹痛や下血を起こす症例も報告されています(Trans R Soc Trop Med Hyg. 100 (4): 387–91.)。多くの症例は、海外旅行から帰った後に症状が出るため、「カリブ海に行って来たゼ!」という人の咳嗽をみたときには、同症を疑う必要があるかもしれませんね。




by otowelt | 2021-04-22 00:40 | 感染症全般

近畿中央呼吸器センター 呼吸器内科の 倉原優 と申します。医療従事者の皆様が、患者さんに幸せを還元できるようなブログでありたいと思います。原稿・執筆依頼はメールでお願いします。連絡先:krawelts@yahoo.co.jp


by 倉原優