重症病床は、緊急増床され現在241床にまで増えていますが、残念ながらそれでも病床は不足しています。軽症中等症病床は1781床を確保しているにもかかわらず、まだ1195床を占めるにすぎません。「軽症中等症病床があいているんだから医療崩壊というのはおかしいだろう」という意見もよく耳にします。
もちろん、「うちは機能的に軽症担当なので無理だ」ということで早期にギブアップして、重症病床へ転院依頼を出している施設もあるかもしれませんが、「重症」というのは基本的に通常酸素療法では対応できないARDS例、すなわち挿管・人工呼吸管理を要する状態です。施設が、中等症IIの患者さんをケアする限界を迎えたことを意味します。全員が重症化するわけではなく、かなり症例をしぼって転院依頼を出しているわけなので、軽症中等症病床がまだ埋まらない段階で重症病床をすべて使ってしまっている状況は、異常事態と言わざるを得ません。
第3波と異なるのは、全体の重症化率が高くなっていることです。「感染者数が増えすぎてスルーされている症例が多く、見かけ上の重症者が増えているだけかもしれない」と当初思ったのですが、もしそうであっても、やはり軽症中等症病床から順々に埋まっていくはずです。軽い肺炎のみで終わる人のほうが少なく、酸素療法を適用されている人が大半である光景を見ると、第4波でCOVID-19の疾患特性が変わったとしか考えられません。となると、N501Y変異株がその原因なのだろうか、と思いたくなります。
大阪府ではCOVID-19・非COVID-19に限らず634床を重症ベッドとして使用できますが、このうちCOVID-19に運用されているのは先ほどの241床です。すなわち、集中治療が可能なベッドのうち38%がCOVID-19に充てられています。知事がおっしゃっているように、待機的手術を減らしてしまえば、重症病床の確保数はもう少し増えるかもしれません。あるいは4:1看護、5:1看護の準ICU病床を重症用に転用するなどの案もあります。しかし、交通外傷や急性疾患に対応できる病床を最低限確保しておかなければ、COVID-19によって大阪府の重症医療の基盤が揺らぎます。
大阪府のシミュレーションでは、4月19日にまん延防止等重点措置の効果が出て新規感染者が減り始めたとしても、5月上旬には重症者が300~400人以上にのぼるとされています。重症病床がいきなり増える見通しはなさそうで、今後軽症中等症で診ていく重症者は増えるかもしれません。奈良県のように民間病院に対して勧告を出せば、軽症中等症病床の確保は可能かもしれませんが、どの程度反発が出るのか予想できません。
図. 療養者数のシミュレーション(第45回大阪府新型コロナウイルス対策本部会議公開資料より)