COPDにおける運動誘発性低酸素血症の定義は?

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労作時に酸素飽和度が下がる集団をみたとき、この現象にはどういう基準が妥当かというエキスパートオピニオンは見事に分かれています。個人的にはベースラインからの相対的な減少をみたほうがよいのではと思っていました。しかし、本研究では絶対値88%未満をみたほうが、よりリスクを正確に反映することが示されました。

この論文は結構勉強になりました。Respiratory Medicineも立派な雑誌だけど、もう少しメジャーな雑誌に掲載されるべき内容と思いました。




  • 概要
■COPDの死亡予測因子として、運動誘発性低酸素血症(exercise-induced desaturation:EID)に関する報告はほとんどない。しかし、EIDの定義はさまざまな定義があり、今回2つの基準を検討することでEIDと長期死亡率の関連を評価した。

■韓国のCOPDコホートから合計507人の被験者を選択した。EIDは、6分間歩行テスト(6MWT)を用いて評価され、2つの異なる基準が用いられた。

①6MWT後の酸素飽和度が88%以下
②6MWT後の酸素飽和度が90%未満あるいはベースラインから4%以上の減少

■EIDの有病率は、基準①によるとCOPD全体で5.1%、基準②によると13.0%だった。161ヶ月の追跡において死亡率はどちらの基準においても、非EID群よりEID群のほうが高かった(基準①:50% vs 11.4%、 基準②:33.3% vs 10.4%)。 非EIDのCOPD患者は、EIDのCOPD患者よりも有意に長く生存した(基準①:143.5ヶ月 vs. 92.9ヶ月、基準②:144.8ヶ月 vs. 115.2ヶ月)。

■多変量Cox回帰分析により、EIDのCOPD患者は、基準①によって死亡リスクが2.4倍増加した(補正ハザード比2.375; 95%信頼区間1.217-4.637; P = 0.011)。基準②により、EIDのCOPD患者の死亡リスクは増加したものの、差は統計的に有意ではなかった。
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. Kaplan-Meier曲線(文献より引用)



LOTT試験(N Engl J Med 2016; 375:1617-1627)でも明らかなように、この程度の酸素飽和度の低下があっても、酸素療法を適用したからといって予後が改善するわけではありません。曝露した喫煙量と宿主感受性に応じて酸素飽和度の低下が伴っているため、時間の針を巻き戻せない限り、これを改善させることはできません。





by otowelt | 2021-06-03 00:51 | 気管支喘息・COPD

近畿中央呼吸器センター 呼吸器内科の 倉原優 と申します。医療従事者の皆様が、患者さんに幸せを還元できるようなブログでありたいと思います。原稿・執筆依頼はメールでお願いします。連絡先:krawelts@yahoo.co.jp


by 倉原優