RECOVERY試験:低酸素血症と全身性炎症がある患者へのトシリズマブ

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COVACTA試験の結果はネガティブでしたが、組み入れ期間がRECOVERY試験でデキサメタゾンの有効性が確認されるより前のコホートであることが指摘されていました。RECOVERY試験のトシリズマブについてはプレプリントが出ていたため医師の間ではすでに知られているデータのように思います。


プレプリントについてすでに記事を書いたのですが、一応、読んでみました。内容はほとんど変わっていませんね。

軽症中等症病床で、重症病床に転院できない症例に対して、早期にアクテムラを投与している施設が増えています。確かにサイトカインストームは強烈で、入院時のCRPが20mg/dL以上、LDHが500U/L以上、フェリチンが1000ng/mL以上、というケースが多く、「第3波の重症」が「第4波の中等症」化しつつあります。



  • 概要
■この研究では、低酸素血症と全身性炎症の両方を有するCOVID-19で入院した成人患者におけるトシリズマブの効果を評価することを目的とした。

■ランダム化非盲検試験において、低酸素血症(室内気の酸素飽和度<92%または酸素療法を要する)および全身性炎症(CRP≧75mg/L)のある被験者が、1:1の割合で通常治療単独と通常治療+トシリズマブ400~800mg(体重に応じて増減)のいずれかに割り付けられた。患者の病状が改善しなかった場合、2回目の投与は12〜24時間後に行うことができるとした。

■主要転帰は、ITT集団で評価された28日間死亡率である。

■2020年4月23日~2021年1月24日までの間に、本試験に登録されたのは4,116人で、3,385人(82%)の患者が全身性ステロイドを投与されていた。トシリズマブ群2,022人の621人(31%)と、通常治療単独群2,094人の729人(35%)が28日以内に死亡した(率比0.85; 95%信頼区間0.76-0.94; p = 0.0028)。この結果は、全身性ステロイドを投与されている患者を含む、事前に規定された全サブグループの患者で一貫して観察された。トシリズマブ群の患者は、28日以内に退院する頻度が高かった(57% vs 50%;率比1.22; 1.12-1.33; p <0.0001)。ベースラインで侵襲的人工呼吸を受けていない患者のうち、トシリズマブを割り当てられた患者は、侵襲的人工呼吸または死亡の複合エンドポイントを満たす頻度が低かった(35% vs 42%;リスク比0.84; 95%信頼区間0.77-0.92 ; p <0.0001)。

■低酸素血症および全身性炎症を伴う入院COVID-19患者において、トシリズマブは生存率およびその他の臨床転帰を改善した。



オルミエントを14日間投与する場合とアクテムラを単回投与する場合の薬価はだいたい同じですが、オルミエントの場合内服し続ける必要があり、途中で酸素化が悪化し飲めなくなるケースも想定されます。また、オルミエントの処方をしたことがないCOVID-19診療医が多く、手が出しにくいのは事実です。







by otowelt | 2021-05-06 00:00 | 感染症全般

近畿中央呼吸器センター 呼吸器内科の 倉原優 と申します。医療従事者の皆様が、患者さんに幸せを還元できるようなブログでありたいと思います。原稿・執筆依頼はメールでお願いします。連絡先:krawelts@yahoo.co.jp


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