日経メディカルの寄稿です。
■倉原優の「こちら呼吸器病棟」コロナ第4波、検査値と画像に見られる異変
https://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/blog/kurahara/202105/570161.html
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大阪府のコロナ第4波では、特に4月以降、医師の間で「いくら何でもCRP高くね?」という意見が増えてきました。その患者の電子カルテを一人ひとり見ていくと、確かに2ケタmg/dLになっている症例が目立ちます。ひどいものでは、40mg/dL近くあります。「血培陽性の肺炎球菌性肺炎か!」というくらい高いのです。 第3波までも、確かに重症になると採血データが荒れ狂う症例がチラホラありました。大阪府のコロナ第4波では、血球貪食症候群(HPS/HLH [hemophagocytic syndrome/hemophagocytic lymphohistiocytosis])ではないのか、というくらいの高フェリチン血症、高CRP血症、高LDH血症、汎血球減少を来す頻度が高いように思います。
近畿中央呼吸器センターのデータ
当院では、フェリチン、CRP、LD(LDH)をほぼ全例で検査していますが、不気味な肺炎が増えてきた第4波(4月1日以降)を拾い上げてみると、血清フェリチン、CRP、LDに明らかな上昇があるように思われます(表1)。当院はもともと軽症・中等症病床でしたが、第3波から、実質的に軽症例は入院せず、中等症・重症病床化しつつあります。ゆえに、期間ごとで一概に比較できるものではありませんが、「第4波」の印象がデータに反映していると感じています。なお、外来で診断され、⾃宅療養あるいはホテル療養になった症例は対象外で、あくまで「⼊院を要した症例」のみのデータである点にご留意いただければと思います。
N501Y変異株クラスターの軽症例を差し引いて、酸素療法が行われている中等症II以上の症例に絞ると、CRPの中央値は約 10 mg/dL、フェリチンの中央値は約 900 ng/mLあたりになります。これは、第3波以前において、「重症化が予測されるライン」でもありました。 第4波で次々に入院してくる患者の中央値がその「重症化が予測されるライン」の⽔準にあるということ⾃体、かなり驚くべきことです。画像所⾒は、COVID-19のパンデミック当初に⾒られていた「マリモ」のような器質化肺炎(OP:organizing pneumonia)パターンとは異なり、とにかく、すりガラス陰影※が見られる面積が極めて大きいという特徴があります(写真1)。呼吸器内科医を長らくやってきましたが、ここまで不気味にすりガラス陰影だけが出てくる呼吸器疾患は見たことがありません。
写真1 中等症IIで入院し重症化した60歳代女性の胸部CT像
このすりガラス陰影というのは、まだ肺胞腔内に浸出液が充満していないフェーズを見ています。間質には炎症が及んでいるのですが、まだ肺胞内の空気は保たれている状態です。そのため、空気の「黒」と水の「白」を足して2で割ったような、うっすら白塗りの画像所見になるのです。この時点では肺胞に含気が保たれているので、まだSpO2自体は持ちこたえていることが多いです。しかし、こういった広範囲のすりガラス陰影を呈するCOVID-19症例では、将来のSpO2低下がほぼ約束されていて、1~2日以内にほぼ100%が急性呼吸窮迫症候群(ARDS)に陥ります。
(参考文献)
1)Osterholm MT, et al. Preparing for the next pandemic. N Engl J Med. 2005 May 5;352(18):1839-42.
2)Huang K, et al. An interferon-gamma-related cytokine storm in SARS patients. J Med Virol . 2005 Feb;75(2):185-94.