COVID-19:罹患後12ヶ月の呼吸器系アウトカム

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Long COVIDの話題です。COVID-19では、早期に拡散能が低下することが示されており、退院直前に肺機能検査を行った稀有な研究でも、両肺に広範な陰影を来す重症例ほど%予測DLCOが低いことが報告されています(Eur Respir J 2020; 55: 2001217)。COVID-19から回復した軽症者2,113例のオンライン調査では、発症後79日時点で「症状が1つもない」と回答したのは1%未満であると報告されています(ERJ Open Res 2020; 6: 00542-2020)。COVID-19発症6ヶ月後という長期データでも、重症度が高い症例ほど%予測DLCOが低いことが分かっており(Lancet 2021; 397: 220-232)、長期間後遺症に苦しむ人がいるというデータが示されています。

今回は、重症COVID-19における呼吸器系の後遺症にスポットをあてた報告を紹介したいと思います。ちなみに、海外の論文における重症(severe)は日本の場合中等症IIに該当します。重症は、海外ではcritical(重篤)と呼びます。



  • 概要
■入院を要するCOVID-19から回復した後の後遺症については、まだ明確に定義されていない。重症COVID-19で入院した患者の、12ヶ月にわたる呼吸器系アウトカムの時間的傾向を調査し、関連する危険因子を調べた。

■前向き縦断コホート研究において、機械的人工呼吸を要しなかった重症COVID-19の入院患者を、退院後3ヶ月、6ヶ月、9ヶ月、12ヶ月後に追跡調査した。高血圧、糖尿病、癌、喘息、COPD、喫煙歴のある患者は除外された。挿管・人工呼吸を要した患者は、人工呼吸そのものが結果に影響を与える可能性があるため除外された。

■追跡中に、患者は外来を受診し、身体検査、定期的血液検査、肺機能検査を受けた。胸部高分解能CT(HRCT)、6分間歩行試験、mMRCが評価された。

■2020年2月1日から3月31日までの間に、135人の適格患者のうち、83人(61%)がこの研究に参加した(男性57%、BMI中央値25.0)。参加者の年齢中央値は60歳だった(IQR 52-66歳)。

■ほとんどの患者で生理機能と運動能力の一時的な改善が観察された。しかし、退院後12ヶ月の時点で、COVID-19の患者の一部では、持続的な生理学的・画像所見上の異常が残っていた。研究期間中、DLCOの有意な遷延性減少がみられ、中央値は3ヶ月で予測値の77%(IQR 67-87%)、6ヶ月で76%(IQR 68-90%)、12ヶ月で88%(IQR 78 -101%)だった。退院後12ヶ月で、放射線学的変化は20人(24%)の患者で持続していた。

■mMRCは、3ヶ月後で0が19%しかいなかったが、経時的に呼吸困難は改善し、12ヶ月後には95%が0だった。
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図. mMRC(文献より引用)

■多変量ロジスティック回帰分析では、女性ではDLCO低下のオッズ比が上昇し(オッズ比8.61 [95%信頼区間2.83-26.2; p = 0.0002)、放射線学的異常は入院中の肺炎スコアピーク値と関連していた(オッズ比1.36 [95%信頼区間1.13-1.62]; p = 0.0009)。



以上の結果から、重症(日本では中等症II)のCOVID-19から回復したほとんどの患者では、呼吸困難スコアと運動能力が時間とともに改善しました。ただし、12ヶ月後の群において、遷延する生理学的および放射線学的後遺症がみられました。

なお、この論文についてはYahoo!個人ニュースの記事でも紹介させていただきました。

■新型コロナ肺炎後の息切れ いつまで続くのか? その対策は(URL:https://news.yahoo.co.jp/byline/kuraharayu/20210611-00236565/




by otowelt | 2021-06-19 00:44 | 感染症全般

近畿中央呼吸器センター 呼吸器内科の 倉原優 と申します。医療従事者の皆様が、患者さんに幸せを還元できるようなブログでありたいと思います。原稿・執筆依頼はメールでお願いします。連絡先:krawelts@yahoo.co.jp


by 倉原優
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