COVID-19:ステロイドパルス考

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Medical Tribuneの連載から一部抜粋します。

■新型コロナで二大ステロイド対決 メチルプレドニゾロン vs. デキサメタゾン(ドクターズアイ 倉原優(呼吸器))(URL:https://medical-tribune.co.jp/rensai/2021/0512536314/

全身性ステロイドがCOVID-19に有効であるという見解は正しいと思われるが、議論の俎上に載せるべきは、おそらく用量と期間である。

動物モデルでは、メチルプレドニゾロンはデキサメタゾンよりも高い肺組織濃度が達成できる(Intensive Care Med 2017; 43: 1781-92)。また、これまでの研究で重症急性呼吸器症候群(SARS)に対するメチルプレドニゾロンの有効性が幾つか報告されている(Chest 2003; 124: 12-15、Eur J Clin Investig 2020: e13458)。さらに、デキサメタゾンよりもメチルプレドニゾロンの方が機械換気を要したCOVID-19患者の死亡率が低かったという後ろ向き研究も存在する(J Intensive Care Med 2021年2月25日オンライン版)。

故に、デキサメタゾンよりもメチルプレドニゾロンを選ぶ方が良いという結論に異論はない。ただ、体重ベースで用量を調節すべきだろうと思う。

私は、ステロイドはできるだけ使いたくない派である。不気味なすりガラス陰影を見たときに、少量使いたいという気持ちにはなるが、ステロイドパルス療法をいきなり投下するのは、できれば避けたいと思っている。

重症COVID-19に対してステロイドパルス療法が日本の病院で行われているが、そもそも同じ「パルス療法」でも、日本では1,000mg/日×3日間、海外では250mg/日×3日間とかなり差があり、「お国柄」で済ませてよいかどうか、疑問が残るところである。海外で用いられている250mg/日×3日間については、臨床的改善が見られたCOVID-19患者の割合は通常ケア群よりも高く(94.1% vs. 57.1%)、死亡率も低かった(5.9% vs. 42.9%、P<0.001)と報告されている(Eur Respir J 2020; 56: 2002808)。

当院はCOVID-19の軽症中等症病床を有するが、重症化しつつある症例に全身性ステロイドを投与することが多い。基本的に静注デキサメタゾン6.6mg/body/日(点滴の場合3.3の倍数しか投与できない製剤事情がある)を用いている。ただ、メチルプレドニゾロンとなるとこれまで適用した用量の幅は広く、高用量を用いたことで弊害を生じている可能性はある。

例えば、重症病床の医師によると「高用量ステロイドを投与された症例で、カテーテル関連感染症の発生率が高く、中心静脈カテーテルの入れ替えが多い。また、気胸や縦隔気腫などの人工呼吸器関連肺損傷の発生が多い」とのことである。実際、ステロイドとトシリズマブを併用したケースでは血液培養陽性率が高くなることが示されている(J Clin Med 2021; 10: 760)。

安易に「日本独自の」ステロイドパルス療法を投下するのは、かなり慎重になった方がよいのは事実であり、学会やガイドラインベースでもう少し議論されるべきと思う。

日本集中治療医学会の『日本版敗血症診療ガイドライン2020(J-SSCG2020)特別編 COVID-19薬物療法に関するRapid/Living recommendations第3.1版』では、日本のステロイドパルス用量でのエビデンスは不足していると言及されている。





by otowelt | 2021-05-12 13:47 | 感染症全般

近畿中央呼吸器センター 呼吸器内科の 倉原優 と申します。医療従事者の皆様が、患者さんに幸せを還元できるようなブログでありたいと思います。原稿・執筆依頼はメールでお願いします。連絡先:krawelts@yahoo.co.jp


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