肺サルコイドーシスに対するニコチンパッチは努力性肺活量を改善
2021年 06月 28日
たばこは体に害ですが、ニコチンパッチなら・・・という妙案により思いついたこの治療。プライマリアウトカムが肺機能というのが解せませんが、今後の長期的報告に期待したいところです。
欧米では喫煙はサルコイドーシスの発症を抑制する可能性があると考えられています。これは、一般集団と比較してサルコイドーシスの患者さんに喫煙者が少ないという疫学的見地によるものです。ただし、日本人の集団では、喫煙とサルコイドーシスの関連性が西洋と異なる可能性があるとされており(Respirology . 2013 Oct;18(7):1152-7.)、人種によって差があるのかどうかも検討課題です。
- 概要
■喫煙はサルコイドーシスの発症リスク低下と関連しており、ニコチンが活動性の肺サルコイドーシス患者の環境抗原に対する免疫応答を正常化することが報告されている。しかしながら、肺サルコイドーシスの進行に対するニコチンの影響は不明である。
■ニコチン治療は高い忍容性でもって、活動性肺サルコイドーシス患者の肺機能を改善するかどうか検証した。
■症状(呼吸困難、咳)と非線維性肺疾患であると考えられる浸潤影に基づいて、活動性肺サルコイドーシスであると診断された18歳以上の50人の連続患者を登録し、ニコチン経皮パッチ治療(1日21 mg)またはプラセボパッチ治療のランダム化二重盲検パイロット試験を24週間実施した。努力性肺活量(FVC)、1秒量(FEV1)、肺テクスチャ定量スコア(LTS)、疲労評価スコア(FAS)、SGRQ、サルコイドーシス評価ツール(SAT)を記録した。
■ニコチン治療は、ベースラインから26週間までの臨床的に有意なFVC改善と関連していた(約2.1%、70 mL)。FVCはプラセボ群で同等の量(2.2%)減少しており、差し引き140mL(95%信頼区間10-260mL)改善したことになる。FEV1とFASはニコチン治療群でわずかに改善していたが、LTS、FAS、SGRQ、SATに改善は観察されなかった。重篤な有害事象やニコチン中毒は報告されていない。
サルコイドーシス患者さんの喫煙については、当然ながら喫煙者のほうが肺機能低下に関連することが分かっており、FEV1、FEV1/FVC、DLCO が有意に低下することが報告されています(Lung. 2012 ;190:529-36.)。
by otowelt
| 2021-06-28 00:17
| サルコイドーシス