COVID-19:イベルメクチンのコクランレビュー


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COVID-19に対するイベルメクチンのコクランレビューです。現時点ではこれがユニバーサルコンセンサスと言えます。



Popp M, et al. Ivermectin for preventing and treating COVID-19. Cochrane Database Syst Rev . 2021 Jul 28;7:CD015017.

  • 概要
■:寄生虫の駆除に用いられる抗寄生虫剤イベルメクチンは、in vitroでウイルスの複製を阻害することが分かっている。感染の初期段階でSARS-CoV-2の複製を阻害することが示唆されている。現在、SARS-CoV-2感染予防およびCOVID-19治療に対するイベルメクチンの有効性と安全性に関するエビデンスは相反している。

■入院患者または外来患者として治療を受けているCOVID-19患者、およびSARS-CoV-2への感染予防を目的としたイベルメクチンの有効性および安全性を、無治療/標準治療/プラセボ/その他の実績のある介入と比較して評価する。

■Cochrane、Web of Science(Emerging Citation IndexおよびScience Citation Index)、medRxiv、Research Squareを検索し、言語制限を設けず2021年5月26日までに完了済み・進行中の研究を特定した。

■COVID-19の診断が確定し、重症度に関係なく、入院または外来で治療を受けている患者の治療、およびSARS-CoV-2感染の予防について、イベルメクチンと無治療/標準治療/プラセボ/その他の実績のある治療を比較したランダム化比較試験(RCT)を対象とした。効果が証明されていない他の介入を比較した研究は除外した。

■Cochrane risk of bias 2を用いてRCT のバイアスを評価した。一次解析では、バイアスのリスクが高い研究を除外した。GRADEを用いて、以下についてエビデンスの確実性を評価した。
①中等症~重症のCOVID-19入院患者の治療:死亡率、臨床的悪化または改善、有害事象、QOL、入院期間、ウイルス排出
②軽症のCOVID-19外来患者の治療:死亡率、臨床的悪化または改善、入院、有害事象、QOL、ウイルス排出
③SARS-CoV-2 感染予防:SARS-CoV-2感染、COVID-19症状発現、有害事象、死亡率、入院、QOL

■イベルメクチンを無治療、プラセボ、標準治療と比較した研究が14件、1678人で見つかった。有効性が証明されている治療法とイベルメクチンを比較した研究はなかった。中等症COVID-19入院患者を対象におこなった研究が 9 件、軽症COVID-19外来患者を対象におこなった研究が4件、SARS-CoV-2 感染の予防を目的としてイベルメクチンを調査した研究が1件あった。8件の研究は非盲検で、6件は二重盲検およびプラセボ対照であった。収録された研究が提供した41件の研究結果のうち、約3分の1は全体的にバイアスのリスクが高かった。イベルメクチンの投与量と治療期間は、含まれる研究によって異なっていた。

入院COVID-19治療におけるイベルメクチンとプラセボまたは標準治療との比較:
イベルメクチンがプラセボまたは標準治療と比較して、死亡率(リスク比0.60、95%信頼区間0.14~2.51;2件の研究、185人)および28日目までの臨床的悪化(侵襲的機械的人工呼吸管理の必要性)(リスク比0.55、95%信頼区間0.11~2.59;2件の研究、185人)を減少または増加させるかどうかは不明だった。 28日以内の有害事象(リスク比1.21、95%信頼区間0.50~2.97;1件の研究、152人)、および7日目のウイルス排出(リスク比1.82、95%信頼区間0.51~6.48;2件の研究、159人)も同様の結論だった。イベルメクチンは、プラセボまたは標準治療と比較して、28日までの臨床的改善(リスク比1.03、95%信頼区間0.78~1.35、1件の研究、参加者73人)および入院期間(平均差-0.10日、95%信頼区間-2.43~2.23、1件の研究、参加者45人)に対して、ほとんどまたは全く効果がない可能性がある。なお、28日目までのQOLを報告した研究はなかった。

外来COVID-19治療におけるイベルメクチンとプラセボまたは標準治療との比較:
イベルメクチンとプラセボまたは標準治療との比較で、28日までの死亡率が減少または増加するかどうかは不明である(リスク比0.33、95%信頼区間0.01~8. 05;2件の研究、422人)。14日までの臨床的悪化についても同様だった(侵襲的人工呼吸管理の必要性:リスク比2.97、95%信頼区間0.12~72.47;1件の研究、398人)。また、イベルメクチンがプラセボと比較して、7日目のウイルス排出を減少または増加させるかどうかは不明だった(リスク比3.00、95%信頼区間0.13~67.06、1研究、24人)。イベルメクチンは、プラセボまたは標準治療と比較して、14日までに症状が消失した参加者数(リスク比1.04、95%信頼区間0.89~1.21、1件の研究、398人)および28日以内の有害事象(リスク比0.95、95%信頼区間0.86~1.05、2件の研究、422人)に対して、ほとんどまたは全く影響を及ぼさない可能性がある。症状の持続時間を報告した研究は、いずれも一次解析の対象とはならなかった。14日後までの入院やQOLを報告した研究はなかった。

SARS-CoV-2感染予防のためのイベルメクチンと無治療との比較:
1件の研究が見つかった。28 日までの死亡率が主要解析の対象となる唯一のアウトカムであった。イベルメクチンが無治療と比較して死亡率を低下させるか増加させるかは不明である(死亡した参加者は0人,1件の研究,参加者は304人)。この研究では、入院については調べていない。

■COVID-19の治療または予防に使用されるイベルメクチンの有効性と安全性については不確実である。研究は小規模で、質が高いと考えられるものはほとんどない。COVID-19の治療または予防のためのイベルメクチンの使用を支持するものではない。




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by otowelt | 2021-08-03 13:27 | 感染症全般

近畿中央呼吸器センター 呼吸器内科の 倉原優 と申します。医療従事者の皆様が、患者さんに幸せを還元できるようなブログでありたいと思います。原稿・執筆依頼はメールでお願いします。連絡先:krawelts@yahoo.co.jp


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