COPDに対する吸入ステロイドは喀痰緑膿菌培養陽性のリスクを上昇

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少し前のATSで報告された内容なので、論文化まだかなと思っていましたが、Thoraxにpublishされました!

デンマークの外来クリニックで経過観察されているCOPD患者コホートDrCOPDにおけるICSの使用は、緑膿菌培養陽性の用量依存性の大幅なリスク増加と関連していたという重要な報告です。ポケット呼吸器マニュアルに記載しようか迷っていましたが、論文化により次の更新から記載させていただくことにしました。

意外なのですが、COPDにおける緑膿菌培養陽性のリスク因子に関するデータはほとんどありません。

喀痰緑膿菌培養陽性のリスク因子に関するこれまでの研究は、COPDの増悪を伴う入院患者を対象とした小規模なコホート研究で報告はあるものの、そもそも入院前に緑膿菌が陽性であった可能性が残ります(Eur Respir J 2009;34:1072–8.、Epidemiol Infect 2003;131:799–804.)。少し視野を広げてみると、たとえば6~17歳の小児を対象にフルチカゾンの効果を検討した二重盲検プラセボ対照試験において、プラセボ群と比較してICS投与群で緑膿菌の培養陽性数が増加したため、早期に中止された知見があります(Cochrane Database Syst Rev 2019;7:CD001915.)。

実臨床では、たとえばCOPD増悪を起こして入院した場合に喀痰培養検査を行うことがありますが、緑膿菌が陽性になっている理由が、ICSなのかどうかはなかなか判断が難しいところでした。


Eklöf J, et al. Use of inhaled corticosteroids and risk of acquiring Pseudomonas aeruginosa in patients with chronic obstructive pulmonary disease. Thorax . 2021 Aug 26;thoraxjnl-2021-217160.
  • 概要
■吸入ステロイド(ICS)はCOPD治療に頻用されるが、肺炎のリスク増加と関連している。この研究の目的は、COPD患者において、ICSの累積使用が緑膿菌の喀痰培養陽性の用量依存的リスク増加と関連しているかどうかを評価することである。

■2010~2017年に外来診療でフォローされたデンマークの複数地域のCOPD患者を含む患者の疫学的コホート研究。ICS使用は、処方箋記録に基づいて分類された。コックス比例ハザード回帰モデルを用いて、緑膿菌の培養陽性リスクを推定した。傾向スコアマッチモデルを用いて感度分析をおこなった。

■2万1408人の患者が本研究に参加し、そのうち763人(3.6%)が追跡期間中に緑膿菌陽性となった。ICSの使用は、緑膿菌培養陽性の用量依存的なリスクと関連していた(低用量ICS:ハザード比1.38、95%信頼区間1.03~1.84、p=0.03、中用量ICS:ハザード比2.16、95%信頼区間1.63~2.85、p<0.0001、高用量ICS:ハザード比3.58、95%信頼区間2.75~4.65、p<0.0001、すべてICS使用なしと比較)(図1)。傾向スコアマッチモデルでも、この結果が確認された(無/低/中用量ICSと比較した高用量ICS高用量:ハザード比2.05、95%信頼区間1.76~2.39、p<0.0001)(図2)。
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図1. DrCOPDコホートの累積頻度(文献より引用)
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図2. 傾向スコアマッチモデルにおける累積頻度(文献より引用)







by otowelt | 2021-09-11 00:34 | 気管支喘息・COPD

近畿中央呼吸器センター 呼吸器内科の 倉原優 と申します。医療従事者の皆様が、患者さんに幸せを還元できるようなブログでありたいと思います。原稿・執筆依頼はメールでお願いします。連絡先:krawelts@yahoo.co.jp


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