COPD増悪に対する全身性ステロイドは将来的な増悪を減らす
2021年 09月 21日
現場で迷うのは、細菌性肺炎を合併してCOPD増悪を起こしたケースです。一般的にABC(Antibiotics/Bronchodilators/Corticosteroids)の3本立てで治療することが多いと思いますが、感染症が明らかに併存している場合に全身性ステロイドの投与を迷うことがあります。
GOLDガイドライン、NICEガイドライン、UpToDateではプレドニゾロン40mg/日×5~14日が推奨されていますが、現場としてはさすがに14日間も投与することはありません。
147人の救急受診したCOPD増悪患者さんにプレドニゾロン40mg/日を10日間投与したランダム化比較試験では、救急部の再受診が減ったと報告されています(27% vs 43%, 統計学的にはボーダーラインp=0.05)(N Engl J Med. 2003;348(26):2618.)
長期的なエビデンスははっきりしていませんが、Wu医師らのような報告が蓄積されて、COPD増悪に対する全身性ステロイドの知見が増えればよいなと思います。
Wu L, et al. Effects of Empirical Glucocorticoid Use on Severe Acute Exacerbation of COPD During Hospitalization. Int J Chron Obstruct Pulmon Dis . 2021 Aug 24;16:2419-2431.
- 概要
■COPD患者の入院中に臨床医が全身性ステロイドを選択する場合、患者の状態を医療スタッフが判断することが多いため、客観的な判断基準は存在しない。本研究の目的は、入院中に全身性ステロイドを投与された患者と投与されなかった患者の重症化転帰を調査することである。
■観察コホート研究である。重度のCOPD増悪による入院データを収集し、1年間追跡調査を行った。退院から1年後に、COPDによる再入院を後ろ向きに収集した。患者は、初回入院時に全身性ステロイド治療を受けたかどうかで、ステロイド群と対照群に分けた。主要評価項目は将来のCOPD増悪率、副次評価項目は入院期間、治療費、COPD関連再入院期間とした。ポアソンモデルとCox回帰モデルを用いて分析した。
■対照群39人、ステロイド群52人の計91人が登録された。ステロイド群の将来的なCOPD増悪の年間発生率は、対照群に比べて有意に低かった(相対リスク0.50 [95%信頼区間0.26-0.98]; P = 0.045)。また、ステロイド群のCOPD増悪再発リスクは、time-to-first-event分析で評価したところ、対照群よりも低かった(ハザード比0.46[95%信頼区間0.22-0.97]; P = 0.042)。サブグループ解析では、血中好酸球数100/μl未満の患者において、ステロイド群の将来的な年間COPD重症増悪率が対照群に比べて有意に低かった(補正相対リスク0.37[95%信頼区間0.17-0.83]; P = 0.016)。
by otowelt
| 2021-09-21 00:03
| 気管支喘息・COPD