COVID-19への全身性ステロイド投与は、抗ウイルス薬に先行させるべきではない

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日経メディカルオンラインの連載です。タイトルは「COVID-19への全身性ステロイド投与は、抗ウイルス薬に先行させるべきではない」です。(URL:https://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/blog/kurahara/202109/571733.html)。

聖路加国際病院呼吸器センター西村直樹先生の「コロナへのステロイド、及び腰も勇み足もNG?」の今日の記事と併せて読んでいただくとよいかもしれません。

内容をブログで公開させていただきます。


COVID-19への全身性ステロイド投与は、抗ウイルス薬に先行させるべきではない

以前から、全身性ステロイドを抗ウイルス薬より先行投与すると、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)による肺炎が増悪するケースがあることが話題になっていました。そのため、現場では「レムデシビル(商品名ベクルリー)→全身性ステロイド」のシークエンス、あるいは両者を同時併用することが推奨されつつあり、全身性ステロイドを先行投与することは回避される傾向にあります。しかし、これについては、エビデンスがはっきりしているわけではありませんでした。最近2つの論文が同時期に刊行されたので、紹介させていただきます。基本的に入院COVID-19例を対象にしています。

香港の研究

香港の1万445人のCOVID-19患者さんを対象としたコホートにおいて、デキサメタゾンが入院中に使用されていた1544人のデータを解析した研究があります1)。「レムデシビル→デキサメタゾン」のシークエンスが93人、「同時併用」が373人(これら2群を「曝露群」と定義)、「デキサメタゾン→レムデシビル」のシークエンスが149人、「レムデシビル非併用」が929人(これら2群を「非曝露群」と定義)という集団です。

この研究によると、曝露群の方が非曝露群よりも、臨床症状の改善(WHOスケール1点以上の改善)までの期間が有意に短い(ハザード比1.23、95%信頼区間[CI]1.02-1.49、P=0.032)という結果でした(図1)。また、曝露群では、生存者の在院日数が2.65日短縮され、5日目以降のWHO臨床スケールも低下しました。さらに、院内死亡リスクも減少させるという結果でした(ハザード比0.59、95%CI 0.36-0.98、P=0.042) 。

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千葉大学病院の研究

2つ目は千葉大学病院の研究です2)。後ろ向きの単施設観察研究において、全身性ステロイドを先行させた群と抗ウイルス薬を先行させた群に分けて解析したものです。 解析対象となった68人の患者さんのうち、ステロイドが先行されたのが16人、抗ウイルス薬が先行されたのが52人でした。

気管挿管、ICU入室、ECMO導入の割合は、ステロイド先行群が抗ウイルス薬先行群よりも有意に高いという結果になりました(それぞれ、81.3% vs 33.3%、P<0.001、75.0% vs 29.4%、P=0.001、31.3% vs 7.8%、P=0.017)(図2)。
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まとめ

以上のことから、症状が出てすぐに全身性ステロイドを開始するという戦略は、重症度を増悪させる可能性があると言えます。同時併用あるいはレムデシビル先行の方がよいでしょう。

RECOVERY試験では、2104人のうちわずか3人(0.14%)のみがランダム化前に抗ウイルス薬を投与されていたことから3)、実臨床におけるインパクトが大きな知見になるかもしれません。

例えば、入院できないため、とりあえずデキサメタゾン錠を処方するという戦略については慎重になる必要があります。

もちろん、発症からある程度時間が経過し、抗ウイルス薬の効果が期待できないものの、器質化肺炎のような濃厚な肺炎があるケースのように、例外的に全身性ステロイドを考慮しなければならない局面はあるかもしれません。




by otowelt | 2021-09-07 07:19 | 感染症全般

近畿中央呼吸器センター 呼吸器内科の 倉原優 と申します。医療従事者の皆様が、患者さんに幸せを還元できるようなブログでありたいと思います。原稿・執筆依頼はメールでお願いします。連絡先:krawelts@yahoo.co.jp


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