結核診療において気管支鏡後喀痰が行いにくい理由は、おこなって喀痰抗酸菌塗抹陽性になると37条適用となり結核病棟に入院になるためです。気管支鏡で「こじあけた」ために喀痰塗抹・培養陽性になるケースは、そこまで感染性はないと考えられます。
非結核性抗酸菌症については、検体が多いほうがいろいろと診断材料が増えるので、気管支鏡後喀痰も1つの手なのでしょうが、気管支洗浄液を超えるほどのインパクトがあるかどうかはまだまだ議論の余地がありそうですね。
韓国からの報告を紹介したいと思います。
Gu K, et al. Usefulness of Post-bronchoscopy Sputum Culture for Diagnosis of Nontuberculous Mycobacterial Pulmonary Disease. J Korean Med Sci. 2021 Aug 9; 36(31): e202.
■非結核性抗酸菌症(NTM-PD)が疑われ、喀痰培養結果が陰性の患者あるいは十分な喀痰検体が得られない患者には気管支鏡検査が推奨される。結核が疑われて気管支鏡検査を受けた患者には、気管支鏡検査後の喀痰の採取が推奨されている。しかし、気管支鏡後喀痰の採取によってNTM-PDの診断率が向上するかどうかはまだ不明である。
■ソウル大学病院で2017年1月1日から2020年6月30日までに診断的気管支鏡検査を受けたNTM-PDの疑いのある患者を対象とした。喀痰培養陰性群とscanty sputum(NTM培養に十分な喀痰量が得られなかったため気管支鏡を受けた患者)群に分類した。気管支洗浄標本と気管支鏡後喀痰からのNTM培養結果をグループ間で比較した。
■喀痰培養陰性群は39人、scanty sputum群は102人で、合計141人の患者が解析対象となった。気管支洗浄液からNTMが培養されたのは,全体の38.3%(54/141)だった(喀痰培養陰性群の30.7%(12/39)、scanty sputum群の41.2%(42/102),P=0.345)。NTMは全体の3.5%(5/141)の患者において気管支鏡後喀痰からのみ培養された(喀痰培養陰性群の7.7%(3/39)、scanty sputum群の2.0%(2/102)、P=0.255)。
■気管支鏡検査を受けたNTM-PDが疑われる患者において、気管支鏡後喀痰の追加採取は診断率をわずかに改善することがわかった。