EBUS-TBBにおける予防的抗菌薬は意味があるか?

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解釈に注意が必要ですが、抗菌薬投与が多変量解析で有意でなかったものの、リスク因子が多数ある場合には有効かもしれないという知見はかなり重要です。

ちなみに、日本国内では48施設4,942人という大規模なJ-BRONCHO試験が良く知られており、予防的抗菌薬投与は気管支鏡後の抗菌薬治療の必要性リスクや続発性感染症のリスクを減らすことはできませんでした(傾向スコアでマッチさせたコホートとの比較で、それぞれのオッズ比は0.79[95%信頼区間0.491.27]1.02[95%信頼区間0.59-1.77])。また、抗菌薬治療群で有意に下痢が多いことが示されました。これによって、抗菌薬を気管支鏡に際してルーチンに投与する意義はほぼ潰えたと思われていたのですが、これはまだ、なぜか論文化されていません・・・。


超音波ガイド下での気管支鏡(EBUS)をおこなう件数は最近増えています。異物を気管支に挿入する行為に差はないので、特段EBUSが感染を起こしやすいわけではないですが、この処置における予防的抗菌薬の意義が藤田医科大学で検討されています(Chest. 2020 Aug;158(2):797-807.)。1,000例以上の気管支鏡検査における予防的抗菌薬に関するこの報告で、予防的抗菌薬はその後の細菌感染症を減らす効果はないと結論づけられました。すなわち、気管支鏡の事前・事後のいずれにおいてもルーチンの抗菌薬が有効とする報告はないと言えます。



Kim B, et al. Using short-term prophylactic antibiotics for prevention of infectious complications after radial endobronchial ultrasound-guided transbronchial biopsy. Respir Med . 2021 Sep 10;188:106609.

  • 概要
■EBUSを用いた経気管支生検(TBB)は、肺の末梢病変の診断を容易にする。しかし、その後の感染性合併症を予防する方法は十分に確立されていない。そこで、感染性合併症を予防するための短期的抗菌薬の経口投与の有効性を調べた。

■484人の患者を後ろ向きに解析した。2018年3月~2019年3月にEBUS-TBBを受けた患者のうち予防的抗菌薬を投与しない群233人、投与した群(アモキシシリン/クラブラン酸3日間投与)251人を抽出した。多変量ロジスティック回帰を用いて、感染性合併症の独立リスク因子を同定した。

■年齢中央値は66歳(IQR:59~74歳)で、58.9%が男性だった。54.4%の患者が既喫煙者または現喫煙者だった。13%(63人)の患者では、EBUSガイドシースによって処置が行われた。感染性合併症は、予防なし群で12人(5.2%)、予防あり群2人(0.8%)だった。多変量解析では、感染性合併症は、空洞、病変の低吸収域、閉塞性の肺浸潤影と有意に関連していたが、抗菌薬の予防投与とは関連していなかった。サブグループ解析では、少なくとも1つ以上のリスク因子を持つ患者に予防的抗菌薬を投与すると、感染性合併症の発生頻度は低くなることがわかった(22.4% vs 0%、p=0.005)。


by otowelt | 2021-10-21 01:31 | 気管支鏡

近畿中央呼吸器センター 呼吸器内科の 倉原優 と申します。医療従事者の皆様が、患者さんに幸せを還元できるようなブログでありたいと思います。原稿・執筆依頼はメールでお願いします。連絡先:krawelts@yahoo.co.jp


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