多剤耐性結核に対するLTBIの有病率および治療レジメン
2021年 10月 12日
これまでのメタアナリシスでは、高所得国におけるMDRTBまたはXDRTB患者さんの接触者でLTBIの有病率は52.6%と報告されています(Eur Respir J. 2013 Jan;41(1):140-56.)。
MDRTBの接触者のIGRA陽性は当院でも紹介例がありますが、有効なレジメンのエビデンスが乏しいため、上司にいつも相談させていただいています。PZAは副作用が多いので、ATS/CDC/ERS/IDSAガイドラインによると通常LTBIレジメンとしては推奨されにくいです(Am J Respir Crit Care Med. 2019 Nov 15;200(10):e93-e142.)。
MDRTBのLTBI治療について、現時点でのエビデンスを掲載します(Lancet Infect Dis.2019;19: 903-912.、Am J Respir Crit Care Med. 2019 Nov 15;200(10):e93-e142.を参考に作成)。新しいエビデンスあったらコッソリご教示お願いします!
Chang V, et al. Latent tuberculosis infection among contacts of patients with multidrug-resistant tuberculosis in New South Wales, Australia. ERJ Open Res . 2021 Sep 20;7(3):00149-2021.
- 概要
■活動性結核の接触者は潜在性結核感染(LTBI)あるいは結核を発病するリスクが高い。接触者の追跡は、曝露された接触者を特定し、その接触者が結核菌に感染していないかどうかスクリーニングし、LTBIから結核への進展を防ぐための治療を検討するかどうか公衆衛生学的に判断する必要がある。本研究では、オーストラリアのニューサウスウェールズ州において、多剤耐性結核(MDRTB)患者の接触者におけるLTBIと結核の有病率を明らかにした。
■7施設で2000年から2016年の間にMDRTBと診断された患者の接触者を対象に、後ろ向きコホート研究を実施した。診療記録を用いて適格な接触者を同定した。LTBIを有するMDRTB患者の接触者に提供されたスクリーニングおよび治療レジメンの結果を調べた。
■55人のMDRTB患者から接触者247人が同定された。このうち、221人(89.5%)はHIV陰性で、陽性例は確認されなかった。接触者はMDRTB患者の家族が94人(38%)だった。
■LTBIは105人(42.5%)の接触者で確認された。20人のLTBI患者(32.3%)が、1~3種類の抗結核薬を様々な用量・期間で使用した治療を受けていた。内訳は、モキシフロキサシン6ヶ月:7人、イソニアジド+リファンピシン:7人(4ヶ月が3人、6ヶ月が3人)、イソニアジド+ピラジナミド9ヶ月:2人、イソニアジド+リファンピシン+ピラジナミド:2人(5ヶ月が1人、6ヶ月が1人)。
■治療を受けていないLTBI患者のうち1人が、調査期間中に活動性結核に移行した。
by otowelt
| 2021-10-12 00:54
| 抗酸菌感染症