OCEAN研究:日本人におけるPRISmの有病率

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COPDを診療している医師の間でも、ぶっちゃけ認知度が低いPRISm。

PRISmは、「Preserved Ratio Impaired Spirometry(1秒率が保たれている肺機能障害)」の略語で、1秒率がCOPDの基準を満たさないのに1秒量だけが低下している状態のことを指します。具体的には、1秒率≧70%かつ予測1秒量<80%の状態と定義されます。つまり、自身の努力性肺活量と比べた1秒量の割合には問題ないのですが、周囲の健康な人とくらべて1秒量が低い状態ということです。

■参考記事:呼吸器内科医が知っておきたい概念:PRISm(URL:https://pulmonary.exblog.jp/28617093/

喫煙者におけるPRISmをいかに拾い上げるかが重要です。



  • 概要
■COPDや喘息などの閉塞性気道疾患は、早期発見・早期治療により疾病負担を軽減できる可能性があるにもかかわらず、多くの患者が診断を受けていない。OCEAN研究は、日本人集団における肺機能障害の有病率とそれに関連する特徴を明らかにし、閉塞性気道疾患の早期発見のための戦略を改善するためにおこなわれた。

■OCEAN研究は、定期的に健康診断を受けている40歳以上の日本人を対象とした、観察的な横断研究である。参加者はスクリーニングのための質問票とスパイロメトリーを受けた。気流制限は、スパイロメトリーによる1秒率が0.7未満と定義され、PRISmは、1秒率≧0.7、予測1秒量<80%と定義された。主要評価項目は、スパイロメトリーに基づく気流制限とPRISmの有病率とした。副次的評価項目として、研究参加者の特性を報告した。

■2518人が対象となり、79%が60歳未満(平均52歳)であった。気流制限は52人(2.1%)、PRISmは420人(16.7%)に観察された。PRISm群の1秒量は、気流制限なし/PRISm群と気流制限群の間にあり、努力性肺活量はPRISm群と気流制限群で同等だった。PRISm群は、気流制限群と比較して肥満が多く、併存代謝性疾患の割合が高かった。気流制限とPRISmの有病率は、現喫煙者(3.9%、21.3%)が、既喫煙者や非喫煙者よりも高かった。




COPDGeneコホートでは、肥満の進行がPRISmのリスクとされており、日本人には当てはまらないのでは・・・と思っていたのですが、OCEAN研究では気流制限よりも肥満の重要性が示された形となりました。ううむ、奥が深いぜ・・・。



by otowelt | 2021-10-03 10:25 | 気管支喘息・COPD

近畿中央呼吸器センター 呼吸器内科の 倉原優 と申します。医療従事者の皆様が、患者さんに幸せを還元できるようなブログでありたいと思います。原稿・執筆依頼はメールでお願いします。連絡先:krawelts@yahoo.co.jp


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