重症喘息に対するリサンキズマブ
2021年 11月 18日
乾癬と喘息は一部作用するサイトカインが重複するところがあります。それが非2型炎症であるTh17細胞→好中球の経路です。
物理的刺激や感染などをきっかけに、樹状細胞からIL-23が分泌され、Th17細胞の分化を誘導します。Th17細胞から産生されたIL-17A、IL-17F、IL-17A/Fは、ケラチノサイトから炎症性サイトカイン、ケモカインなどの遊走を誘導します。さらに、ケラチノサイトから産生されたIL-17Cが、先ほどのIL-17A、IL-17Fをレギュレーションする悪循環を起こします。
今日紹介するのは、リサンキズマブ(スキリージ®)の喘息に対する効果をみた論文です。やはり「関節炎と喘息では病気の価値基準が違う」としか言いようがないですね。さすがに、使ったらあかんレベルでしょうかね。
- 概要
■IL-23は、2型および17型サイトカインが介在する気道炎症に関与している。喘息の治療においてIL-23を標的とすることで、疾患のコントロールが改善し、気道の炎症が抑えられるかどうかは不明である。
■成人重症喘息患者を対象に,抗IL-23p19モノクローナル抗体であるリサンキズマブの有効性と安全性を評価するため、第2a相多施設共同無作為化二重盲検プラセボ対照24週間並行群間比較試験を実施した。患者は、リサンキズマブ90mgまたはプラセボに割り付けられ、4週間に1回、皮下投与された。主要評価項目は、最初の喘息悪化までの期間とした。悪化は2日以上連続してベースラインから悪くなった場合と定義された。これは、朝の呼気ピークフローが30%以上低下した場合、24時間以内のレスキュー薬の吸入回数がベースラインから50%以上増加した場合、重度の喘息増悪が発生した場合、ACQ-5で0.75 ポイント以上の上昇が発生した場合を指す。
■合計105人の患者にリサンキズマブが投与され、109人にプラセボが投与された。患者の臨床的特徴は両群で類似していた。最初の喘息悪化までの期間は、リサンキズマブのほうがプラセボよりも短かった(中央値40日 vs 86日,ハザード比,1.46;95%信頼区間1.05~2.04;P=0.03)。リサンキズマブによる喘息の年間悪化率は、プラセボと比較して1.49(95%信頼区間1.12~1.99)であり,重度増悪率は1.13(95%信頼区間0.75~1.70)であった。喀痰トランスクリプトームパスウェイ解析では、ナチュラルキラー細胞と細胞傷害性T細胞の活性化、および 1型ヘルパーTと17 型ヘルパーTの転写因子の活性化に関与する遺伝子が、リサンキズマブによってダウンレギュレーションされていた。リサンキズマブ療法に伴う安全性の懸念はなかった。
by otowelt
| 2021-11-18 00:23
| 気管支喘息・COPD